当座(読み)トウザ

デジタル大辞泉 「当座」の意味・読み・例文・類語

とう‐ざ〔タウ‐〕【当座】

物事に直面した、すぐその場。即座。「当座知恵
さしあたっての、その場。目下のところ。「借金当座をしのぐ」「当座の間に合わせ」
しばらくの間。一時。「上京した当座は苦しかった」
当座預金」の略。
歌会・句会などで、その席上で出される題。また、その題で即席に詠まれる和歌俳句席題。即題。⇔兼日けんじつ
居合わせている、その場、その席。
「―の一族三十余人」〈太平記・一〇〉
[用法]当座・当分当面――「これだけあれば、当座(当分・当面)間に合う」など、しばらくの間の意では、相通じて用いられる。◇「当座」には「開店した当座は客も少なく苦しかった」のように、過去のある期間を表す用法もある。◇「当分」は、やや長い期間を表す。「当分会えないよ」「当分の間、入院することになった」など。◇「当面」には「当面する課題」のように、時間の長さではなく「今・現在」を表す用法がある。◇類似の語に「さしあたり」があり、「さしあたり生活には困らない」のように、「当面」「当座」と同じように用いられる。
[類語]差し向きまずもって当面当分しばらく臨時応急一応差し当たり差し詰めひとまずとりあえず取り急ぎ・今のところ・随時不時不定期折に触れて時には時として往往たまたまたまさか時時ときどき時折折折時たま間間折節散発間欠周期的とかく時にたまややもすればともすると得てしてなにかにつけ何かと言えばまず始め最初第一一次原初嚆矢こうし手始め事始め優先一番しょぱないの一番真っ先先立ち先頭当初初期初頭始期早期劈頭へきとう冒頭出出でだ滑り出し初手出端ではなはなはし口開け取っ付きあたまのっけスタート序の口皮切り第一歩第一声始まり始まる始めるトップ初発発端端緒濫觴らんしょう権輿けんよ起こりとば口取っ掛かり開始幕開き開幕立ち上がり口切り最優先何をおいても何はさておき何はともあれ口火を切る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「当座」の意味・読み・例文・類語

とう‐ざ タウ‥【当座】

〘名〙
① 居合わせているその座。その席。また、その場にいる人々。その席上の人々。
※大鏡(12C前)四「当座の御おもては優にて、それにぞ人々ゆるし申給ける」
平家(13C前)二「当座の公卿みな長方の義に同ずと申あはれけれども」
② 物事に当面したその時。その折。現在ただ今。
※虎寛本狂言・三人片輪(室町末‐近世初)「某は当座能い物を預た」
③ その場ですぐなされるさま。即座。即刻。
古今著聞集(1254)一六「この歌の返しつかうまつるべし。但六首を一首にてかへすべしと、仰下されければ、当座につかうまつりける」
浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)三「若小忰有とも当座に捻り殺して仕廻ふ」
④ その場かぎり。その時だけ。一時。
※玉塵抄(1563)一六「大国の楚がせがむほどに当座したがうかををするまでぞ」
虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一二「只の女と不知(しら)を切る当座(タウザ)の嘘は吐たくない」
⑤ さしあたり。しばらくの間。当分。
※玉塵抄(1563)二七「いつわって先当座奉公人になって」
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉七四「夫に別れし当座こそ亡き人恋しさに我儘云ひしものの」
⑥ その場で出す和歌・俳句などの題。兼日(けんじつ)に対し、席上で即座に題を与えられて詠む和歌や俳句。また、その会。即詠。即吟。⇔兼日(けんじつ)
明月記‐建久二年(1191)閏一二月四日「有当座狂歌等
※俳諧・類船集(1676)太「売買の銀は当座にとりやりこそよけれ」
※浮世草子・好色盛衰記(1688)四「煙其日暮しに立て、突米の当(タウ)座、扣き納豆、あさりのぬきみ、居ながら調て自由成住家なり」
朝野新聞‐明治二二年(1889)九月二四日「定期当座の預け主は〈略〉引出しを請求すれども」
⑩ 話題になっている、芝居などのその一座
※義血侠血(1894)〈泉鏡花〉七「静々歩出でたるは、当座(タウザ)の太夫元滝の白糸

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