(読み)アト

デジタル大辞泉 「後」の意味・読み・例文・類語

あと【後】

《「」と同語源》
人の背中の向いている方向。後ろ。後方。「子犬がからついてくる」「郷里の町をにする」
ある時点からのち。
㋐以後。「転んでからのことは覚えていない」「で悔やむ」「二年には完成する」「問題の解決をへ回す」⇔
㋑終了後。「番組ので視聴者プレゼントがあります」
㋒死後。「に残された子供」「を弔う」
ある時点より前。以前。
「四五日―、おれが処へ来て何といった」〈魯文西洋道中膝栗毛
連続するものの中で、次にくるもの。
㋐ある基準で並べた順番の、終わりの方。「名簿のの方」⇔
㋑次の代わりのもの。「おは何にしますか」「電車がからからやってくる」
㋒後継者。後任。「宣伝部長のを決める」
㋓子孫。後胤こういん。「が絶える」
㋔後妻。「をもらう」
物事が終わってから残ったもの。
㋐残った部分。残された余地。「の始末をつける」「は次の機会に譲る」「追いつめられてがない」
㋑なごり。あとあとまで心に残るもの。特に、思い出。遺徳。「を引く」「祖父のをしのぶ」
副詞的に用いて)まだ余地のある状態を表す。今からさらに。「一年任期が残る」「三分で終了します」
(接続詞的に用いて)それから。「、気付いたことはありませんか」
[補説]2㋒の「後を弔う」では「跡」とも書く。
[類語](1後ろ後方しりえ背後後部後面直後/(2のち事後その以後爾後じご以降今後さき後後あとあと後後のちのち先先直後将来未来近未来行く末末末前途向後自今来たる目先行く先行く手行く行く行方先行き生い先後年他年この後これから向こう/(6もう更になおまだもっとよりなおさらますます一層一段と余計いやが上にいよいよも少しもう少しずっと然も今一つもう一ついまいち今少しもそっとぐっとぐんと

ご【後】[漢字項目]

[音](慣) コウ(漢) [訓]のち うしろ あと おくれる しりえ しり
学習漢字]2年
〈ゴ〉
空間的にあとの方。うしろ。「後光銃後人後背後
時間的にあとの方。のち。「後刻後日後手ごて以後午後今後最後死後事後食後戦後老後
しり。「鶏口牛後
おくれる。「後家
〈コウ〉
うしろ。「後援後宮後続後退後部後頭部
のち。あと。「後悔後期後継後難後任後年後輩後半後遺症
おくれる。「後進国
〈のち〉「後後後程
〈あと〉「後味後後後厄
[名のり]しつ・ちか・のり・もち
[難読]明後日あさって後妻うわなり後朝きぬぎぬ後込しりご

のち【後】

その時のあと。その事のあと。「晴れ曇り」「協議の結論を出す」
これから先。未来。将来。「の時代を担う人」
死後。なきあと。「の世」
子孫。後胤こういん
元輔もとすけが―といはるる君しもや今宵の歌に外れてはをる」〈・九九〉
[類語]あと後後あとあと後後のちのち先先直後事後その以後爾後じご以降今後将来未来近未来行く末末末前途向後自今来たる目先行く先行く手行く行く行方先行き生い先後年他年この後これから向こう

ご【後】

ある事件よりものちの日、または、時。あと。「その」「数分
[類語]のち事後その以後爾後じご以降今後さき後後あとあと後後のちのち先先直後

ゆり【後】

後刻。後日。
我妹子わぎもこが家の垣内かきつのさ百合花―と言へるは否と言ふに似る」〈・一五〇三〉

こう【後】[漢字項目]

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「後」の意味・読み・例文・類語

あと【後】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「跡(あと)」の意義が拡大したものという )
    1. 空間的なうしろ。進行方向を持つ移動体のうしろ。⇔さき
      1. (イ) 後方。背後。うしろ。
        1. [初出の実例]「われも行く方あれど、あとにつきてうかがひけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
      2. (ロ) 後方の守りをする軍勢。後衛。
        1. [初出の実例]「定めて追手も、跡(アト)より懸り候ふらん」(出典:太平記(14C後)七)
    2. 時間的な後。時間の流れの中で、ある事柄が生じた時点を基準とした、後続の時間帯や時点。⇔さき
      1. (イ) ある事柄があった後。以後。のち。
        1. [初出の実例]「横雲の晴れゆくあとの明けぼのに峰とびわたる初雁の声」(出典:隆信集(1204頃))
      2. (ロ) 特に、人の死後。死後の霊。亡きあと。また、死後に行く世界。後世。転じて、追善供養
        1. [初出の実例]「更にのちのあとの名をはぶくとても、たけき事もあらじ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
        2. 「はかなくなりにける人のあとに、五十日のうちに一品経供養しけるに」(出典:山家集(12C後)中・詞書)
    3. 自分の過ごしてきた時間の流れの中で、現在、もしくはある時点より振り返ってみた過去の時間帯や時点。以前。前(まえ)。⇔さき
      1. [初出の実例]「あとよりも、見事な花が開いたぞ」(出典:寛永刊本江湖集鈔(1633)二)
    4. 全体量に達する前の段階で、未然にとり残されている部分。
      1. [初出の実例]「分散残りの百両は、私が七十両、跡(アト)は外の者へつかはします」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初)
    5. 行為や事件の結果として残った事柄。また、その状態。
      1. [初出の実例]「此女も客を勤めてかなしうない事をないて、跡(アト)取置て、男は下帯もかかぬうちに立出で」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)六)
    6. 家系、役目などを継ぐこと。また、その人。後継者。→跡(あと)
      1. (イ) 子孫。後裔(こうえい)。「あとが生まれる」
      2. (ロ) 後任者。後継者。
      3. (ハ) 後妻。のちぞい。
        1. [初出の実例]「君だって長い間には何れ継聘(アト)を迎(もら)ふのだらう」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
    7. 浄瑠璃で、事件が一段落した切り場のあとに、後段の趣向の呼び出し、または伏線となる語り場の称。「仮名手本忠臣蔵‐四段目・裏門の場」、「加賀見山旧錦絵‐奥庭の場」などの類。落合(おちあい)
    8. 深川などの遊里で、揚げられた遊女に入っている次の予約。
      1. [初出の実例]「何さソレ初くわ〈とあとをいひさうにするを〉後はいわずとよし」(出典:洒落本・愚人贅漢居続借金(1783))
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 ( 数量を示す語を伴って ) その数量が加われば、時間的、空間的または数量的に予定した何かを充たすことを示す。「あと一メートルでゴール」「あと一枚ある」「あと一時間かかる」「あと少しだ」など。
    1. [初出の実例]「春休も最早あと二日になった日」(出典:黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉三)

うしろ【後】

  1. 〘 名詞 〙 空間的にも、時間的にも用いる。
  2. 正面に向いている場合、ほぼ、視野外の方角に当たるところ。体が向いているのと逆の方向に当たるところ。背後。後方。あと。しりえ。
    1. [初出の実例]「うちむづかりて、うしろむき給へる御ぐしの」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
  3. 背。背中。または、後頭部。
    1. [初出の実例]「かしらおろしては、かうぶりとられなんと人のものすればなむ、いささかうしろのこして侍る」(出典:多武峰少将物語(10C中))
    2. 「九条殿なん御うしろをいだきたてまつりて」(出典:大鏡(12C前)三)
  4. 後ろ姿
    1. [初出の実例]「奥のかたより見いだされたらんうしろこそ」(出典:枕草子(10C終)八三)
  5. 正面からは見えない部分。物の背後、向こう側。かげ。ものかげ。
    1. [初出の実例]「うしろの屏風によみてかきける」(出典:古今和歌集(905‐914)賀・三五二・詞書)
  6. ある物の後部。
    1. [初出の実例]「車には、めされ候ふ時こそうしろよりめされ候へ」(出典:平家物語(13C前)八)
  7. ( 多く、「うしろやすし」「うしろかるし」などの形で使われる ) 人の生活や環境において、不確定、不安定な部分。人の生活の背後にある部分。
    1. [初出の実例]「罷りまさむ道は、〈略〉宇志呂(ウシロ)も軽く、安らけく通らせ」(出典:続日本紀‐天応元年(781)二月一七日・宣命)
  8. 下座(しもざ)
    1. [初出の実例]「御手水の間、台盤所はうしろにす」(出典:弁内侍日記(1278頃)建長元年五月)
  9. 下襲(したがさね)や袴などの尻の部分。
    1. [初出の実例]「うしろをまかせて、御前のかたにむかひてたてるを」(出典:枕草子(10C終)一一)
  10. ( 行った者、死んだ者の立場からみていう ) 人が立ち去った後。また、死後。
    1. [初出の実例]「世を去りなんうしろの事知るべきことにはあらねど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)椎本)
  11. ( 時の流れに従って進んで行く者の背後の意から ) 過ぎ去った昔。過去。
    1. [初出の実例]「その時になって見ると、〈略〉すべて後方(ウシロ)になった。すべて、すべて後方になった」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部)
  12. 芝居で、役者が所作をしている間、舞台の陰で歌ったり三味線などを演奏すること。また、その音楽。下座音楽。
    1. [初出の実例]「くさぶえ入のうしろで読まうといふ、ふみだっけ」(出典:洒落本・通言総籬(1787)一)
    2. 「唄(うた)俗に又つなぎ、一名うしろとも云」(出典:戯場訓蒙図彙(1803)三)
  13. 舞台に出て役者の着付けを直すなどの世話をする者。後見。
    1. [初出の実例]「うしろとしたのは、後見やはやしへ廻る印よ」(出典:滑稽本・八笑人(1820‐49)四)
  14. 舞台の後方に控え、必要に応じてせりふを付けたり役者の着付けを直したりなどの世話をすること。また、その者。後見。「うしろを付ける」

後の語誌

( 1 )古代、「うしろ」の意味の中心は「背面・ものかげ」にあり、「前方」の意の「まへ」と対義関係になる「後方」の意味は、もっぱら「しりへ」で表わされていた。
( 2 )中古末期頃から、「うしろ」が「しりへ」の意味領域に進出し、「後方」の意味をも担うようになるに及んで「しりへ」は衰退する。その結果現代におけるように「うしろ」は「まえ」の対義語としても用いられるようになった。


のち【後】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 空間的に、うしろ。
    1. [初出の実例]「すべてのこと前にのみいそげば後(ノチ)は必(かならず)おろそかになり」(出典:小学入門(甲号)(1874)〈民間版〉)
  3. 時間的に、それよりあと。ある時よりあと。
    1. (イ) それが行なわれたあと。
      1. [初出の実例]「笹葉に 打つや霰(あられ)の たしだしに 率寝(ゐね)てむ能知(ノチ)は 人は離(か)ゆとも」(出典:古事記(712)下・歌謡)
    2. (ロ) 今後。将来。これから先。
      1. [初出の実例]「我が心 浦渚(うらす)の鳥ぞ 今こそは 我鳥(わどり)にあらめ 能知(ノチ)は 汝鳥(などり)にあらむを 命は な死せたまひそ」(出典:古事記(712)上・歌謡)
      2. 「あが君や、のちの心みにはありといふとも、けふの御返事は、露をも見給へ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
    3. (ハ) 後刻。後日。すこし時がたったあと。
      1. [初出の実例]「さらなる事はのちに、さはとぞと答へてぞたち給ひぬるのちに」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)四)
  4. 後世。のちの世。
    1. [初出の実例]「をとめらが後(のち)しるしと黄楊小櫛(つげをぐし)生ひかはり生ひて靡きけらしも」(出典:万葉集(8C後)一九・四二一二)
  5. 死後。没後。
    1. [初出の実例]「但し、命ののち、女子のために、けぢかき宝とならむ物を奉らん」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  6. 子孫。
    1. [初出の実例]「火の酢芹の命の苗裔(ノチ)、諸の隼人等、今に至まで、天皇の官墻之傍(みかきもと)を離れずして」(出典:日本書紀(720)神代下(鴨脚本訓))
  7. 順番や序列が、あとであること。また、下であること。
    1. (イ) 次に、ある位についた人。おくれてなった人。次(つぎ)
      1. [初出の実例]「案日本紀云、〈略〉後(のちの)皇子尊薨」(出典:万葉集(8C後)二・二〇二・左注)
    2. (ロ) 同じ種類の物事が続けてある場合の、あとの方の物事。二度め。次(つぎ)
      1. [初出の実例]「若し後の斎ひの時は後の字を加へよ」(出典:延喜式(927)祝詞)
    3. (ハ) 来年。明年。
  8. 太陰暦で、普通の月に続いているもう一つの月。閏(うるう)
    1. [初出の実例]「そのころ廉夫人懐胎にて後(ノチ)の彌生は臨月なるよしを聞ぬ」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)続)

ご【後】

  1. 〘 名詞 〙
  2. のち。あと。時間、空間の両方にいい、進行方向、あるいは物事の正面に対して反対の側をいう。
    1. [初出の実例]「ソノ go(ゴ)ワ オトズレガ ナイ」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
    2. 「転居の前(ぜん)に於ける始末と、後(ゴ)に於ける処置」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
  3. ごご(午後)」の略。

こう【後】

  1. 〘 名詞 〙 子孫。末裔(えい)
    1. [初出の実例]「顔魯公が後(コウ)として名人の末の者と思て」(出典:玉塵抄(1563)四)
    2. [その他の文献]〔春秋左伝‐桓公二年〕

ゆり【後】

  1. 〘 名詞 〙 のち。後刻。後日。
    1. [初出の実例]「吾妹子が家の垣内(かきつ)小百合花(さゆりばな)由利(ユリ)と云へるは否といふに似る」(出典:万葉集(8C後)八・一五〇三)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

五節舞

日本の上代芸能の一つ。宮廷で舞われる女舞。大歌 (おおうた) の一つの五節歌曲を伴奏に舞われる。天武天皇が神女の歌舞をみて作ったと伝えられるが,元来は農耕に関係する田舞に発するといわれる。五節の意味は...

五節舞の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android