精選版 日本国語大辞典 「後退」の意味・読み・例文・類語
あと‐ずさり【後退】
〘名〙 (「あとすさり」「あとすざり」とも)
① 前を向いたままで後ろにさがること。あとじさり。
※農具便利論(1822)中「此源五兵衛耒耜の用やうは、〈略〉あとすざりに一通りひけば、鍬をもてうち和げたるよりむらなく土も深く和らぎ」
② 思いきって行動しないで、ぐずぐずすること。ためらって消極的な態度をとること。しりごみ。逡巡(しゅんじゅん)。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)続「人夫等は応(いらへ)も得せで、互(かたみ)に面(おもて)をあはしつつ、逡巡(アトスサリ)して立もあがらず」
③ 近世の和船が荒天の時、安全を保つためにとる処置。船尾をさきにして船首から風波をうけるようにして流される状態をいう。その際、船首から碇(いかり)をつけた綱を数条「たらし」に引かせ、方向の安定を保つ。逆艫(さかども)。
※東航紀聞(1851)「碇二頭を舳の左右へ二房綱にして、跡すさりにし」
あと‐じさ・る【後退】
〘自ラ五(四)〙 (「あとしざる」とも)
① =あとずさる(後退)①
※滑稽本・七偏人(1864)五「恟(びっくり)しながら後(アト)じさり」
② =あとずさる(後退)②
※門三味線(1895)〈斎藤緑雨〉五「未(まだ)ほんとに知らねえものと此れには困りて逡巡(アトジサ)るを」
あと‐ずさ・る【後退】
〘自ラ五(四)〙 (「あとすさる」「あとすざる」とも)
① 前を向いたままで後ろにさがる。あとじさる。
② 思いきって行動しないで、ぐずぐずする。しりごみする。逡巡(しゅんじゅん)する。あとじさる。
あと‐じさり【後退】
〘名〙 (「あとしさり」「あとしざり」とも)
① =あとずさり(後退)①
※承応神事能評判(1653)八嶋「あとしざりに退きし間」
② =あとずさり(後退)②
※書言字考節用集(1717)九「逡巡 アトシザリ」
③ 昆虫「ありじごく(蟻地獄)」の異名。
④ 動物「かにむし(擬蠍)」の異名。
こう‐たい【後退】
〘名〙
② 力や勢いが次第に衰えること。物事が好ましくない事態に向かって進むこと。
しり‐しさり【後退】
〘名〙 (「しりじさり」とも) 前を向いたまま後ろへそろそろと退くこと。しりすさり。あとじさり。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)八「逡━は、しりしさりに退くぞ」
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