押し葉(読み)おしば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「押し葉」の意味・わかりやすい解説

押し葉
おしば

植物を吸湿紙などに挟んで適当な重石(おもし)で押しながら乾燥させた標本のことで、腊葉(さくよう)ともいう。生きた植物は長期間にわたっての保存ができないため、数百年もの保存が可能な腊葉標本は、植物分類の重要な基礎資料である。新種を発表するときは腊葉の基準標本タイプ標本)を示し、それ以後はこのタイプ標本に基づいて同定(分類学上の所属決定)を行うことになっている。腊葉は動物標本の剥製(はくせい)や液浸に比べて平面的であるため、大量の資料を集め、保管できる利点があり、植物の比較研究、分布などの資料としても重要である。

 夏休みの研究などで押し葉をつくるときには、根のついた草本や、できるだけ花や果実のある樹木小枝を選んで採集するように心がけると、種名を決める際に有効である。採集品は大きいビニル袋などに入れて持ち帰り、新聞紙1ページを二つ折りにした間に挟む。新聞紙からはみ出た枝や葉は、曲げるなどして押し込んでおく。新聞紙の表面には採集日、採集地、花の色や生育条件などを直接記入する。押し葉を挟んだ新聞紙は、吸湿紙(新聞紙で代用してもよい)と交互に重ねて重石で押しておく。吸湿紙を毎日取り替えると、花や葉の色をそのまま残して乾燥させることができる。果実などのように厚みがあり、水分の多いものはかびやすいので乾燥するまでよく注意をする。十分に乾燥したら標本はできあがりである。個人的な標本の場合は、とくに台紙にはる必要はなく、むしろ新聞紙に挟んだままのほうが傷みにくい。乾燥標本であるため防湿防虫にはよく配慮し、茶箱、あるいはビニルに包んで段ボール箱などに防虫剤とともに入れて保管するとよい。

[杉山明子]

押し花

花を押し葉様にしたもので研究よりは趣味的なものである。花を好みの形に整え、雑誌や書籍の間に挟むだけでできるが、大きな花や肉の厚い花は不向きである。花片の薄いもの(アサガオツユクサなど)は、ちり紙などで覆ってから挟むと形を傷めずにつくることができる。また、色を自然のままに保つためには、シリカゲルなどの乾燥剤を袋に入れ、花の部分にあてて挟み込むとよい。

[杉山明子]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「押し葉」の意味・わかりやすい解説

押し葉
おしば
herbarium

さく葉 (さくよう) ともいう。植物,特に顕花植物,シダ植物,大型の藻類などのおもに葉を平たく乾燥した標本。葉と限らず花,根なども含めて押し葉と呼ぶ。植物体を新聞紙その他の吸湿紙にはさみ,プレスし,湿った紙を数回取替えるようにして乾燥させる。乾燥した押し葉は,別に台紙を用意して張付け,研究観察の便に供するため採集地などの事項を記入したラベルを添えて保存する。

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