於て(読み)オイテ

デジタル大辞泉 「於て」の意味・読み・例文・類語

おい‐て【×於て】

[連語]《動詞「お(置)く」の連用形接続助詞」の付いた「おきて」の音変化》(「…において」の形で用いる)
場所を表す。…で。…にて。「東京於て大会を挙行する」
時間を表す。…のときに。「過去於てそうであったことが現在もそうとは限らない」
場合・事柄を表す。…に関して。…について。…にあって。「技術於て劣る」「人にはなんでもないことが、彼に於ては苦痛であった」
係助詞」を伴って)仮定条件を表す。…の場合には。
「還幸なからんに―は」〈平家・一〇〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「於て」の意味・読み・例文・類語

おい‐て【於て】

  1. 〘 連語 〙 ( 「おきて」の変化した語。漢文訓読において用いられ始めた。「…において」の形で、まれに「…でおいて」の形で、格助詞的に用いられる )
  2. 動作、作用の行なわれる場所、時間などを示す。…で。…にあって。
    1. [初出の実例]「此は一年の中に拠(オイ)て、三三をもちてことに説くなり」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃))
  3. 事物、人物などについて、それに関連することを示す。
    1. (イ) …に関して。…について。
      1. [初出の実例]「後の二頌は余の衆において請ひしことを頌す」(出典:石山寺本法華経玄賛平安中期点(950頃)三)
      2. 「草木愁たる色あり、況や覇陵の松においてをや」(出典:延慶本平家(1309‐10)六末)
    2. (ロ) ( 「は」を伴って ) (他のものはとにかく)…に関しては。…にあっては。
      1. [初出の実例]「汝いまにおいては、仏法を修行し大乗経を書写せよ」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)二月二八日)
      2. 「関白殿〈略〉、御身にをひては何の御怖畏か有るべきに」(出典:保元物語(1220頃か)中)
  4. ( 「は」を伴って ) 仮定条件を示す。…の場合には。
    1. [初出の実例]「還幸なからんにおいては、三種の神器いかでか玉躰をはなちたてまつるべきや」(出典:平家物語(13C前)一〇)

於ての語誌

格助詞「に」をともなう「において」の形は「於」を訓読した「ニオキテ」の音便形。「於」は平安時代から「ニオイテ」の他、「ニシテ」とも読まれ、「ニシテ」が主として具体的な場所を指すのに対し、「ニオキテ(ニオイテ)」は論理的・抽象的な関係を示していた。院政期頃まではこのような使い分けがなされていたようであるが、やがて場所・時間を表わす場合にも「ニオキテ(ニオイテ)」が用いられるようになった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android