出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
北海道南部,洞爺(とうや)湖の南岸にある有珠(うす)山の側火山。標高398m。胆振(いぶり)支庁有珠郡壮瞥(そうべつ)町に属する。1943年12月以降1年余の火山活動によって生成された。新溶岩はデイサイトで粘性が極めて高く,地下からの貫入によって土地を隆起させ屋根山と呼ばれるドーム状の新しい山体をつくったのち,溶岩円頂丘を地表に突出させたものである。43年12月28日以降有珠山一帯を襲った連続的地震が活動の先駆で,翌44年1月に入ると震源は東麓に集中し,東麓部の地盤隆起と地裂発生が観察され,とくに東麓斜面標高120~150mの字九万坪の畑地が地盤隆起の中心となり,6月23日この地に最初の水蒸気爆発が起こった。7月から10月にかけて十数回の大爆発を繰り返して,梅鉢状に7火口が形成されたが,同時に地盤隆起は継続し,標高250mをこえる屋根山を形成した。11月中旬火口群中央部から溶岩円頂丘が出現し,これは410mをこえる高度に達し,45年7月には活動はほぼ終息した。
この新火山は田中館秀三によって昭和新山と名付けられた。第2次世界大戦末期という情勢のため,この火山の生成は公表されなかったが,地元の郵便局長三松正夫により克明に記録され,それは〈三松ダイヤグラム〉と呼ばれている。溶岩円頂丘はその後山頂部が崩落して高度をやや減じたが,比高約100m,底径約350mある。この円頂丘を生成したマグマは揮発分を失うと急速に固化する性質をもつもので,有珠山火口内の大有珠・小有珠も同様の岩質からなっている。溶岩円頂丘の上昇中,溶岩表部に接した粘土層は厚い天然煉瓦となり,その表面には擦痕が見られ,円頂丘上にはかつて有珠外輪山溶岩の下部にあった河床円礫(えんれき)が多数存在することが注目される。屋根山は底径東西1000m,南北800mで,有珠外輪山溶岩と火山基底の岩類などが破壊されて円礫層などとともに押し上げられている。円頂丘の南西縁には噴気孔があり,この近くまでバスが通じ,大有珠付近の外輪山頂との間はロープウェーで結ばれている。溶岩円頂丘は特別天然記念物に指定されている。
執筆者:岡本 次郎
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北海道南西部、洞爺湖(とうやこ)南岸にある火山。有珠(うす)火山の東麓(とうろく)に昭和時代に新生した寄生火山。石英安山岩質である。胆振(いぶり)総合振興局管内の壮瞥町(そうべつちょう)にあり、支笏(しこつ)洞爺国立公園内で、特別天然記念物に指定されている。有珠山の北側山腹に「明治新山」を生じた1910年(明治43)の噴火から33年間の休止期ののちに、1943年(昭和18)12月末から付近で有感地震が続発し、翌1944年1月から人家に近い平らな麦畑が隆起し始め、「屋根山」と名づけられた丘を生じた。6月末~10月末にはそこで爆発を繰り返し、11月中旬、屋根山中央部にごく粘り強い新溶岩が押し出し始めた。一連の活動は1945年9月に停止したが、標高150メートルだった畑が170メートルも隆起し、その上に突き出た溶岩円頂丘とあわせて、標高398メートルの新山になった。噴気活動はいまも続いている。新火山の生成過程を壮瞥郵便局長であった三松正夫(みまつまさお)(1888―1977)が克明に記録、「三松ダイヤグラム」を作成し、その様相を明らかにしたことは世界的に有名である。付近に火山博物館、植物園などもあり、観光客が多い。なお、玄武岩~安山岩の成層火山である有珠山の頂部にある大有珠、小有珠も石英安山岩の溶岩円頂丘で、有珠火山の噴火の特徴が認められる。
[諏訪 彰]
『三松正夫著『昭和新山――その誕生と観察の記録』(1970・講談社)』
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…二重式火山で山頂部に直径1.8km,標高約500mの外輪山をもち,火口原に小有珠,大有珠(741m)の溶岩円頂丘およびオガリ山,有珠新山(653m)の潜在円頂丘のほか銀沼とよばれる小沼がある。また,北麓にはコンピラ山,西丸山,明治新山,東丸山などの潜在円頂丘があり,東麓には昭和新山の溶岩円頂丘がある。有珠山は完新世のはじめ,玄武岩・輝石安山岩の溶岩・火山砕屑物を噴出して成層火山を形成したのち,山頂部が爆発で崩壊して外輪山を生じ,多量の崩壊物が岩屑なだれとなって南麓を覆い,一部は内浦湾(噴火湾)に達した。…
※「昭和新山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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