〈すまる〉ともいう。西洋名のプレヤデス星団のこと。二十八宿では昴宿(ぼうしゆく)にあたる。すばるの語意はとうに忘れられてきたが,江戸の国文学者狩谷棭斎,平直方などの考証により,これは〈統(す)べる星〉の意味で,六星が糸で統べたように集まったものとするのが定説となっている。すなわち,《古事記》の神話に五百津之美須麻流之珠(いおつのみすまるのたま),《万葉集》に須売流玉(すまるのたま),906年(延喜6)の《日本紀竟宴和歌》に儒波窶(すばる)の玉などとある,上代人の髪や手首の玉飾を,この星団に名づけたもので,〈すまる〉が転じて〈すばる〉となったとみられる。しかし,星の名の文献としては,源順の《和名抄》がもっとも古く,〈昴星 宿曜経(すくようきよう)云昴星ハ六星,火神也,音与卯同。和名須波流〉とある。次いで清少納言の《枕草子》に〈星はすばる……〉とあるのが広く知られている。くだって江戸時代,安永年間(1772-81)刊の《物類称呼》には,〈昴ぼう すばると云(いう),二十八宿の内也。東国にて九ようの星と云,江戸にては,むつら星と云〉とある。現在でも,すばる,すまるの名は,関西,中国,四国,九州一円に行われているが,原意は江戸以前すでに忘失されたため,なまって〈すわり星〉〈すわり〉〈つばる〉や,〈すまり〉〈すもり〉などとなり,多くは寒夜の空にすくんでいるように見えるための名として,熊本地方には〈すわり地蔵〉の名もある。すばるが農耕の星として重んじられたことは,古代の中国やギリシア,現在の南方の島々でもすべてそうで,日本もその例外ではなかった。漁業にも,イカの集りなどを知るのに用いられている。したがって方言も数十に及び,俚諺(りげん)も豊富である。
→プレヤデス星団
執筆者:野尻 抱影
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…略号Tau。黄道星座の一つ。V字形のヒヤデス星団が牛の顔,数個の星の集りに見えるプレヤデス星団が牛の肩になる。ギリシア神話では,大神ゼウスがフェニキアの王女エウロペのもとに通う時の化身の姿であるという。星空では天の川沿いにオリオンと向きあう。α星アルデバランは赤色巨星で〈あとに従うもの〉の意。プレヤデス星団に続いて東の地平線をのぼる星だからであるが,この星の和名〈あとぼし〉あるいは〈すばるのあとぼし〉は同一の発想に基づくものである。…
…ギリシア神話で,ティタン神アトラスとプレイオネPlēionē(オケアノス〈大洋〉の娘)の7人の娘,アルキュオネAlkyonē,メロペMeropē,ケライノKelainō,エレクトラĒlektra,アステロペAsteropē,タユゲテTaygetē,マイアMaia(伝令神ヘルメスの母)の総称。彼女たちはその母とともにボイオティア地方の森の中で,狩人のオリオンに5年にわたって追われつづけたため,これを憐れんだゼウスが母娘も追手もともに天に上らせ,オリオンを犬を連れた狩人の星に,娘たちをそのオリオン星から逃れようとする7羽の鳩(古代ギリシア語でペレイアデスpeleiades)の星(和名は昴(すばる))に化したという。プレイアデスの名はのちにプトレマイオス2世(前3世紀)治下のアレクサンドリアに集まった多くの悲劇詩人のうち,リュコフロンらの特にすぐれた7人の称として用いられた。…
…一つ星が足りないのは流れ星になったのだという伝説がある。〈すばる(昴)〉ということばは清少納言の書いた《枕草子》にも出ているように古くから親しまれている日本名である。この星団の星々は数千万年前に誕生したもので,非常に若々しい青白い星々が多い。…
…その中の代表的なものを五十音順に示した。なお,〈明の明星〉〈すばる(昴)〉〈北斗七星〉〈宵の明星〉はそれぞれの項目を参照されたい。天津赤星(あまつあかぼし)《旧事紀》の天神本紀にある。…
※「昴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...
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