曲げる(読み)マゲル

デジタル大辞泉 「曲げる」の意味・読み・例文・類語

ま・げる【曲げる】

[動ガ下一][文]ま・ぐ[ガ下二]
まっすぐな物などを弓形にする。まがった状態にする。たわめる。「針金を―・げる」「腰を―・げる」
傾ける。傾斜させる。「首を―・げる」
(「枉げる」とも書く)本来主義・考え・希望などをむりに変える。「信念を―・げる」
(「枉げる」とも書く)道理事実などを意図的にゆがめる。「法を―・げる」「事実を―・げた報道」
《「質」と同音の「七」の字の第2画を曲げるところから》質に入れる。「時計を―・げる」
[下接句]己をげるを枉げるかんむりを曲げる旋毛つむじを曲げるひじを曲げるへそを曲げる
[類語]ねじるひねるよじるねじれるよじれるたわめるねじ上げるねじ向けるれる捻転

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「曲げる」の意味・読み・例文・類語

ま・げる【曲・枉】

  1. 〘 他動詞 ガ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ま・ぐ 〘 他動詞 ガ下二段活用 〙
  2. 棒状のものなど、物の形を屈曲した状態にする。たわめる。おりまげる。
    1. [初出の実例]「是に、皇后(きさいのみや)、針(はり)を勾(マケ)て鉤(ち)を為(つく)り」(出典:日本書紀(720)神功摂政前(北野本訓))
    2. 「糸を輪にまけて、組みて沈の朸(あふご)につけたり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
  3. 傾ける。ななめにする。また、方向を変改する。「貸家の札をまげてはる」「首を横にまげる」
    1. [初出の実例]「ヱヱそれ傾(マゲ)てもつと飜(こぼ)れるは」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)初)
  4. ( 「が(駕)を枉(ま)ぐ」から ) わざわざ向こうから訪れる。
    1. [初出の実例]「幼年に在りて、亡逃(に)げて自ら匿れたり。猥(マケ)て求め迎へられて」(出典:日本書紀(720)顕宗元年二月(図書寮本訓))
  5. 道理、事実、決意、本心我執などを改め変えたり、ゆがめたり、おさえつけたりする。
    1. (イ) 無理にこじつけてゆがめる。理を非にする。理をねじまげてよこしまなことをする。
      1. [初出の実例]「玄藻を紆(マケ)て宗極を序明したまへ」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
    2. (ロ) 気持や性質をゆがめさせる。また、気を損ずる。
      1. [初出の実例]「世に、いささかも人の心をまけたることはあらじと思ふを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    3. (ハ) 意志願望を押えつける。また、自分の気持をおさえて外に出さなくする。
      1. [初出の実例]「母具したる物は、まづこれにといふままに、まげられて」(出典:落窪物語(10C後)三)
    4. (ニ) 改変する。改竄する。
      1. [初出の実例]「ひたすら情を写さむとて事実を枉(マグ)ることも多かるべし」(出典:小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上)
  6. ( 「質」に通じる「七」の字は下部を曲げるところからいう ) 質入れする。
    1. [初出の実例]「まぐる 何によらず、質にをくことをいふ」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一)
  7. ( 「人差指を曲げる」意で ) くすねる。ちょろまかす。盗む。
    1. [初出の実例]「判官が所持の道具、俄浪人(にはからうにん)にまげられなと」(出典:浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)四)

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