沈黙(読み)チンモク

デジタル大辞泉 「沈黙」の意味・読み・例文・類語

ちん‐もく【沈黙】

[名](スル)
だまりこむこと。口をきかないこと。「沈黙を守る」「沈黙を破る」「沈黙して語らない」
音を出さないこと。物音もなく静かなこと。「深い夜の沈黙
活動をせずにじっとしていること。「長い沈黙を破って新作を発表する」
[補説]書名別項。→沈黙
[類語]黙る黙りこくる押し黙る黙する黙り込む口を閉ざす口を閉じる口を結ぶ口をつぐむ口を塞ぐ口を封じる口が重いおくびにも出さない無言黙黙だんまり箝口かんこう緘黙かんもく無口寡黙寡言黙秘うんともすんともむっつりノーコメントむすっと黙過もっか完全黙秘口重くちおも口重い黙止暗黙言い渋る言い兼ねる言い淀む口ごもる言わず語らず口が堅い言葉を呑む言を左右にする口を濁す言葉を濁す

ちんもく【沈黙】[書名]

遠藤周作歴史小説。江戸時代初期、キリシタン弾圧の中で棄教したポルトガル人司祭を主人公にした作品。昭和41年(1966)発表。同年、第2回谷崎潤一郎賞受賞。昭和46年(1971)、篠田正浩監督により映画化

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精選版 日本国語大辞典 「沈黙」の意味・読み・例文・類語

ちん‐もく【沈黙】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 落ち着いていて口数が少ないこと。〔布令字弁(1868‐72)〕 〔晉書‐嵆康伝〕
  3. ( ━する ) 口をきかないこと。だまりこむこと。〔慶応再版英和対訳辞書(1867)〕
    1. [初出の実例]「思はず顔を見合わせて沈黙する」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三)
  4. ( ━する ) 音を出さないこと。物音もなくしんとしていること。静かなこと。また、その状態。静寂。
    1. [初出の実例]「彼のウエストミニスタルの幽鬱なる積土の中に沈黙したる一個の死人は」(出典:将来之日本(1886)〈徳富蘇峰〉九)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「沈黙」の意味・わかりやすい解説

沈黙(映画)
ちんもく
Tystnaden

スウェーデン映画。1963年作品。翌年日本公開。脚本、監督イングマール・ベルイマン。彼の作品歴中では、これに先だつ『鏡の中にある如(ごと)く』(1961)、『冬の光』(1963)の二作とあわせて「神の沈黙・三部作」ともよばれている。ベルイマンの映画では、人間の精神的苦悩が神を見失った人間の苦悩として描かれることが多いが、この作品は、エステル(イングリッド・チューリン)とアンナ(グンネル・リンドブロム)という対照的な姉妹の確執と相克のうちに救済のない苦悩を直視している。演劇的ともいえる静謐(せいひつ)なスタイル、執拗(しつよう)なクローズアップ使用による女の感情の追求、ドア、窓、廊下といったデコールの緻密(ちみつ)な効用など、ベルイマンらしさを随所にみせる名作である。

[岡島尚志]


沈黙(遠藤周作の小説)
ちんもく

遠藤周作の長編小説。1966年(昭和41)書き下ろしとして新潮社刊。切支丹(キリシタン)禁制の日本に渡ってきた司祭ロドリゴは、無辜(むこ)の信徒たちを救うために踏絵を踏むことになるが、このとき彼は、「踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、お前たちの痛さを分つため十字架を背負ったのだ」というキリストの声を聴く。神の沈黙への問いと、背教汚名のゆえに歴史の底に沈黙せしめられている人々に声を与えんがために書いたというこの作品は、その主題のはらむ深い問いかけと、成熟した文体、手法において代表作とよぶに足る。

[佐藤泰正]

『『沈黙』(新潮文庫)』

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デジタル大辞泉プラス 「沈黙」の解説

沈黙〔映画〕

1971年公開の日本映画。監督・脚本:篠田正浩、原作・脚本:遠藤周作、撮影:宮川一夫、音楽:武満徹、録音:西崎英雄。出演:ディビッド・ランプソン、マコ・岩松、ダン・ケニイ、加藤嘉、松橋登、滝田裕介、丹波哲郎ほか。第26回毎日映画コンクール日本映画大賞、監督賞、音楽賞、録音賞受賞。

沈黙〔小説〕

米国の作家ロバート・B・パーカーのハードボイルド小説(1999)。原題《Hush Money》。「スペンサー」シリーズ。

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普及版 字通 「沈黙」の読み・字形・画数・意味

【沈黙】ちんもく

無言。

字通「沈」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の沈黙の言及

【ケージ】より

…《ソナタとインタールード》(1946‐48)が代表的である。40年代末よりしだいに音響と沈黙をそれ自体として聴くことに音楽の意義を見いだし,音響を独立させるために,偶然的に音響を並べる易(えき)にヒントを得た〈チャンス・オペレーションズ〉の方法を用いて《易の音楽Music of Changes》(1951)等を書く。沈黙の曲《4分33秒》(1952)もこの考え方から生まれたが,この期のケージの活動には,後のハプニング等の原型が含まれている。…

【スウェーデン映画】より

…続いて,シェーベルイ監督の《もだえ》(1944)のシナリオライターとしてデビューし,50年代半ばに《不良少女モニカ》《道化師の夜》(ともに1953),《夏の夜は三たび微笑む》(1955)などで世界を驚かせたイングマル・ベルイマンが,スウェーデン映画の〈神秘主義〉を一身に背負って今日に至っている。ギリシア神話のダフネスとクロエの物語を〈純潔な官能美〉で満たした北欧版(サドゥールの評)アルネ・マットソン監督《春の悶え》(1951)の大ヒット以来,スウェーデン映画はセックスのはんらん時代を迎えるが(その頂点がビルゴット・シェーマン監督《私は好奇心の強い女》(1967)であった),ベルイマンはそうした流行とはまったくかかわりなく,《沈黙》(1963)に見られるようなセックスと神,すなわち肉欲と信仰の葛藤をテーマに映画をつくり続け,60年代末には〈ベルイマンの神秘主義〉に反発してフランスのヌーベル・バーグの感覚を意識的に採り入れ,〈抒情性と社会性をミックスした〉映画をめざした新鋭監督ボ・ウィデルベルグ(《みじかくも美しく燃え》1967,《ジョー・ヒル》1971)などの登場が注目されたものの,やはり,その豊饒(ほうじよう)な創作活動と息の長いキャリアで〈スウェーデン映画の巨匠〉ベルイマンの位置は不動のままである。 なお,グレタ・ガルボを筆頭に,〈第二のガルボ〉といわれたイングリッド・バーグマン,アニタ・ビョルク,ビベカ・リンドフォース,ビビ・アンデルソンといったスウェーデン女優がハリウッドに〈輸入〉されたが,なかでもガルボとバーグマンはハリウッドの女優史の中核をなす重要な存在になった。…

【ベルイマン】より

…ハリウッド製のエンタテインメントとは極端に対照的なその深刻で難解な〈芸術性〉のゆえに,アメリカでは〈1960年代のアート・ハウスの巨匠〉というレッテルもはられている。1960年代には,〈神の沈黙〉三部作とよばれる《鏡の中にある如く》(1961),《冬の光》《沈黙》(ともに1963)を中心にしたベルイマン映画が世界のアート・シアター(アメリカではアート・ハウス)を独占するほどの流行になった。 牧師の子に生まれ,学生時代から演劇活動を始め,脚本家として映画界入り。…

※「沈黙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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