新生児では頭蓋(とうがい)を構成する頭骨の骨化が未完成で、各頭骨の隣り合う縁は離れており、その間隙(かんげき)は結合組織性膜だけでふさがれている。この部分を泉門とよぶ。とくに、頭蓋冠では泉門も大きいため、頭蓋泉門とよばれるが、これはすべて頭頂骨の周囲に存在している。頭蓋泉門には次の4種6個がある。
(1)大泉門 泉門ではもっとも大きく、2個の前頭鱗(ぜんとうりん)(将来、癒合して1個の前頭骨をつくる)と両側の頭頂骨とが合する部分にある。成人では冠状縫合と矢状縫合(しじょうほうごう)の交叉(こうさ)点に相当する。大泉門は菱(ひし)形をなし、この部分では下層にある動脈の拍動に触れることができる。触診では満1年から1年半、解剖学的には2年で閉鎖するとされている。
(2)小泉門 両側の頭頂骨と後頭骨との間にあり、成人では矢状縫合と人字縫合(ひとじほうごう)(ラムダ縫合)との交叉点にあたる。小泉門は尖端(せんたん)を前方に向けた三角形状をしているが、頭蓋の後方にあるため、後泉門ともいう。生後3か月くらいで小泉門は閉鎖するとされる。
(3)前側頭泉門 蝶形骨(ちょうけいこつ)の大翼の上縁部で前後に走る間隙が前側頭泉門で、6か月から1年で閉じる。
(4)後側頭泉門 側頭骨乳突部の上部にあたる。形は不規則で、後側頭泉門の閉鎖は1年から1年半といわれている。泉門は新生児によっては過剰にできる場合もある。
[嶋井和世]
古くは顖門(しんもん)といった。俗には〈ひよめき〉という。新生児の頭では扁平骨の周辺部が骨化していないため,3個または4個の骨が相会するところでは柔らかい膜様部が残り,これを泉門という。指で触れることができるばかりでなく,脈拍に一致してぴこぴこ動くのが見えるので〈おどり〉〈おどりこ〉などともいい,〈ひよめき〉もここから出た名である。泉門は4種6個あり,大泉門(左右の頭頂骨と左右の前頭骨の間のひし形の泉門)と小泉門(左右の頭頂骨と後頭骨の間の三角形の泉門)は非対性,前側頭泉門と後側頭泉門は対性である。そのうち大泉門が最も大きく,単に泉門といえばこれをさす。水頭症,髄膜炎などでは泉門の閉鎖が異常となるため,小児科臨床上,とくに大泉門の閉鎖の様子が注目される。
→頭骨
執筆者:藤田 恒太郎+藤田 恒夫
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…しかし胎児や新生児などで,骨化が十分に進んでいない時期では,縫合も発達不十分で,隣接する骨の間には比較的大きい間隙があり,この部分は結合組織により膜状に閉鎖している。この間隙を泉門という。泉門のうち,とくに左右の頭頂骨と前頭骨の間のものは,ひし形の大きい間隙で,大泉門といわれる。…
…子どもの頭蓋では縫合が完成せずに,その場所が軟組織のまま残っているが,それはここでまだ骨の成長が起こりつつあるしるしである。泉門はこのような発育状態にある縫合が交差する場所である。複雑な形の骨(例えば下顎骨や椎骨)が成長する場合には,その形は必ずしも相似的に増大するものではない。…
※「泉門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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