洗粉(読み)あらいこ

精選版 日本国語大辞典 「洗粉」の意味・読み・例文・類語

あらい‐こあらひ‥【洗粉】

  1. 〘 名詞 〙 物を洗うのに用いる粉。洗顔洗髪、入浴時などに用いる化粧用の粉をいう場合が多い。近世には、麦のふすま米ぬかなどが広く用いられ、また、白小豆緑豆の粉が上質として珍重された。明治以後は、小麦粉などのでんぷん質に、せっけん類、硼砂(ほうしゃ)重曹などの無機物をまぜたものが多く用いられた。
    1. [初出の実例]「髪はさねかづらの雫にすきなし、身はあらひ粉(コ)絶さず」(出典浮世草子好色一代男(1682)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「洗粉」の意味・わかりやすい解説

洗粉 (あらいこ)

顔や身体を洗うと同時に,色を白くし,肌荒れを治し,きめを細かにするとして古くから用いられてきた化粧料。古代中国では澡豆(そうず)と呼び,大豆や赤小豆粉に胡粉,土瓜根(カラスウリの根),白檀(びやくだん),麝香(じやこう)など生薬を10~30種配合したものが使われていた。日本へも古くから伝わり澡豆を佐久豆(さくず)と訛って呼ばれていた。小豆などの豆粉は発泡性の強いサポニンを多く含んでいるため,汚れをおとす力が強く単独にも使っていた。しかし近世には《女用訓蒙図彙》(1687)に緑豆,滑石,白付子,白芷,白檀,甘松,竜脳の7種を粉にして〈行水のとき身にぬりあらへば,身につやをいだし,はだへをこまやかにやはらかになし,あせぼ,にきびさめはだに妙なり〉とあるように〈肌あらい粉玉肌散〉として商品化された。明治の中ごろからデンプンセッケンホウ砂,重曹などの洋風洗粉や美白作用のあるウグイスの糞なども商品化され,洗粉は第2次大戦前までは最も需要の多い化粧料のひとつであった。髪洗粉は洗粉に酸性白土を加えたものである。
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