総鰭類(読み)ソウキルイ

デジタル大辞泉 「総鰭類」の意味・読み・例文・類語

そうき‐るい【総×鰭類】

古生代デボン紀中期に現れた硬骨魚類一群頭蓋骨とうがいこつが前後二つの部分から構成されることが特徴現生種にシーラカンスがある。

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精選版 日本国語大辞典 「総鰭類」の意味・読み・例文・類語

そうき‐るい【総鰭類】

  1. 〘 名詞 〙 硬骨魚類一つ神経頭蓋が前後二つの部分に分かれるのが特徴。古生代デポン紀中期に現われたが、現存種としてはシーラカンスが発見されているのみ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「総鰭類」の意味・わかりやすい解説

総鰭類
そうきるい
[学] Crossopterygii

肉鰭(にくき)綱総鰭亜綱の魚類。総鰭類はかつてはシーラカンス類Coelacanthimorpha、リゾドゥス類Rhizodontimorpha、ポロレピス目Porolepiformesを含むオステオレピス類Osteolepimorphaの三つのグループからなる分類群として認められていたが、今日では、総鰭類は自然群ではないと考えられている。シーラカンス類はおそらくほかのすべての肉鰭類の姉妹群であり、ポロレピス目魚類は肺魚の姉妹群、オステオレピス類は四足動物の姉妹群と考えられている。しかし、これら肉鰭類の類縁関係については多くの異なる意見がある。

 シーラカンス類はデボン紀の中ごろから中生代の終わりにかけて化石が発見されている。白亜紀の終わりに絶滅したと考えられていたが、1938年に南アフリカ東岸で生きた個体が発見され、現生は2種が知られている。おおむね4科が認められており、そのうち3科は化石種のみで構成されている。このほかに類縁のはっきりしない所属不明の種が多く存在する。シーラカンス類は頭蓋(ずがい)骨が前部後部に分かれており、脳は後部に納められている。前部と後部は関節し、前部を動かすことができる。2枚の喉板(こうばん)があること、尾びれが両尾で鰭条が直接尾椎(びつい)に関節していることなどの特徴を有する。

 リゾドゥス類はデボン紀後期から石炭紀前期にかけて1科7属が知られており、オステオレピス類と四足動物の姉妹群と考えられている。

 オステオレピス類はデボン紀中期からペルム紀前期にかけて化石が発見されており、大きなものでは4メートルに達するものがいた。体は分厚い菱(ひし)形の鱗(うろこ)で覆われていた。7科が認められており、そのうちのパンデリクチス科Panderichthyidaeは、イクチオステガIchthyostegaやほかの多くの迷歯類と歯や頭部背面の骨がきわめて類似していることから、四足動物の姉妹群と考えられている。

[籔本美孝]

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改訂新版 世界大百科事典 「総鰭類」の意味・わかりやすい解説

総鰭類 (そうきるい)

硬骨魚類の1亜綱Crossopterygii。総鰭類と肺魚類を合わせて肉鰭亜綱Sarcopterygiiとする研究者もある。内鼻孔類と称せられたこともあるが,総鰭類には内鼻孔がないという研究もあるので,この名称は使わないほうがよい。古生代のデボン紀には総鰭類も肺魚類もよく似ていたので,共通の祖先から進化したと考えられている。体は一般にコスミン鱗でおおわれていた。背びれ(2基)と胸びれしりびれと尾びれをもっている。胸びれと腹びれには中央に軸になる支持骨があり,その周辺に鰭条(きじよう)がついている。尾びれは異尾のものと両尾のものとがある。総鰭類はさらに扇鰭類せんきるい)とシーラカンス類に分けられる。扇鰭類のなかまのエウステノプテロンは最も原始的な両生類イクチオステガによく似ている。扇鰭類のなかまのオステオレピスOsteolepis類から両生類のカエル類が,ホロプティクスHoloptichs類からサンショウウオ類が進化したとする学説が強い支持を受けている。すなわち,扇鰭類のなかまから少なくとも3系統が両生類への線をこえて進化したということになる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「総鰭類」の意味・わかりやすい解説

総鰭類
そうきるい
crossopterygians

肉鰭綱 Sarcopterygiiのうち,シーラカンス目 Coelacanthiformesなどに属する魚の総称。古生代デボン紀に現れ,ほとんどの種はすでに絶滅化石として産出するが,1938年12月22日,シーラカンスが南アフリカ共和国のイーストロンドン沖で捕獲され,その生存が確認された。シーラカンス類は原始的形態を残し,ハイギョ類に次いで陸生脊椎動物に近い位置にあるとされる。(→硬骨魚類

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百科事典マイペディア 「総鰭類」の意味・わかりやすい解説

総鰭類【そうきるい】

デボン紀に栄えた硬骨魚類。魚類から両生類への進化をたどる上で重要。扇鰭(せんき)類とシーラカンス類に分けられる。扇鰭類のオステオレピスからカエル類,ホロプティクスからサンショウウオ類が進化したという説が有力。上下の顎骨(がっこつ)の縁に沿って並ぶ鋭い歯は原始両生類に似て,切断面で複雑な迷路状構造を示す。ひれの内部の骨の配列は四肢骨への出発点と考えられている。
→関連項目イクチオステガ両生類

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世界大百科事典(旧版)内の総鰭類の言及

【口蓋】より

…したがって口腔の天井は一定の骨格を中核とする上顎の口腔面が粘膜に覆われたもので,このような口蓋が一次口蓋の最も単純なものである(ただし,軟骨魚類では,口腔内面は楯鱗(じゆんりん)で覆われている)。ところが,古生代の高等硬骨魚類であった総鰭(そうき)類のなかには,肺をもつと同時に,鼻孔(外鼻孔)が口腔の天井へ開通してできた内鼻孔を備え,鼻を通じて空気呼吸をするものが現れた。そして,この仲間の魚類から最初の四足動物である両生類が進化してきた。…

【脊椎動物】より

…この類で最古のものはシルル紀後期に現れ二畳紀まで栄えた板皮類(綱)Placodermiで,これから最初に分かれた(オルドビス紀後期)のが軟骨魚類Chondrichthyesと推定されているが,これの化石は,やはり板皮綱から分かれデボン紀前期に現れた硬骨魚類Osteichthyesよりも後のデボン紀中期にならないと姿を見せない。硬骨を獲得した硬骨魚綱の中の総鰭類(亜綱)Crossopterygiiから分かれ,四肢と肺を獲得した両生類Amphibiaはデボン紀から石炭紀への移行期,両生綱から分かれ羊膜を獲得した爬虫類Reptiliaは石炭紀後期,爬虫類の祖竜亜綱Archosauriaから分かれ羽毛を獲得した鳥類Avesはジュラ紀前期,同じく爬虫綱の単弓亜綱Synapsidaから分かれ毛と乳腺および3個の中耳小骨を獲得した哺乳類Mammaliaは三畳紀後期に現れている。無顎綱,板皮綱,軟骨魚綱,および硬骨魚綱を合わせて魚類Pisces,残りのものを四足動物Tetrapodaの2上綱とすることがある。…

※「総鰭類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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