家庭医学館 「緑膿菌肺炎」の解説
りょくのうきんはいえん【緑膿菌肺炎】
緑膿菌というグラム陰性桿菌が肺に感染しておこる肺炎です。この細菌が分泌(ぶんぴつ)する色素によって、たんや膿(うみ)が青緑色になるので、緑膿菌と名づけられています。
緑膿菌は、口内に常在しているほか、湿った環境で繁殖することができるため、石けんや、一部の抗菌消毒液の中、殺菌の不十分な医療材料からも感染することがあります。また、医療従事者や介護者の手を通じて、保菌者から別の患者さんにうつることもあります。
つねに口内に緑膿菌がいる人の割合は、健康な人全体の5~12%ですが、ほかの病気で4週間以上入院した患者さんでは、50%に増えています。
緑膿菌肺炎の感染経路は通常、口腔(こうくう)や咽頭(いんとう)に付着した菌が、からだの抵抗力が落ちたときなどに気管や気管支に入って気管支炎をおこし、さらに肺に入って肺炎をおこすことが多いのです。
また、からだの肺以外の部位に感染している緑膿菌が、血液にのって肺に流れていき、感染をおこすこともあります。これはまれですが、重症になりやすく、発症して1~2日で死亡した例も報告されています。
[症状]
通常は、ゾクゾクする寒けと震え(悪寒(おかん)・戦慄(せんりつ))、38℃以上の発熱、呼吸困難、多量の悪臭をともなう緑色のたんがみられます。血(けっ)たんをともなうこともありますが、胸痛はまれです。
しかし、重い病気のために、からだの抵抗力が弱っている患者さんや、高齢者では、かならずしも高熱が出るわけではなく、意識障害で現われる場合も多いため要注意です。
[治療]
原因である細菌を殺すために、抗生物質を使用しますが、多くの種類の抗生物質に抵抗力をもっている(多剤耐性(たざいたいせい)の)緑膿菌が多く、治療がむずかしいこともあります。
しかし、最近、緑膿菌を攻撃する抗生物質の開発が進み、院内発症の緑膿菌肺炎の死亡率は低くなったという報告もあります。
ほかに、肺のはたらきが障害されて血液が低酸素状態になるのを改善するために酸素吸入したり、炎症を鎮めるために抗炎症薬を使ったりします。
[予防]
緑膿菌肺炎は、口内の細菌によって発症することが多いため、毎食後の歯みがきやうがいをよく行ない、口内を清潔にすることです。
また、長時間、同じ姿勢で寝ていると、気管、気管支、肺にたまった分泌物をたんとして吐き出しにくくなりますし、とこずれもできやすくなります。とこずれの傷口には、緑膿菌が感染しやすく、それがさらに肺へと感染するという悪循環ができることもあります。
したがって、寝たきりの患者さんなどの場合は、しばしば姿勢を変えたり体圧の分散をはかって、とこずれを予防しなければなりません。
さらに、緑膿菌は医療従事者や介護者の手を通じて、保菌者からほかの人に感染することがありますから、保菌者を訪問した後は、何度も流水で手を洗うように心がけます。