デジタル大辞泉 「艶」の意味・読み・例文・類語

えん【艶】[漢字項目]

常用漢字] [音]エン(呉)(漢) [訓]つや なまめかしい あでやか
〈エン〉
なまめかしい。色っぽい。「艶歌艶冶えんや艶麗濃艶豊艶妖艶ようえん
男女の情事に関すること。「艶書艶聞
つや〉「艶事色艶
[名のり]おお・もろ・よし

つや【艶】

物の表面から出るしっとりとした光。光沢。「宝石を磨いてを出す」
なめらかで張りがあり美しいこと。「若々しいのある声」「肌にがある」
おもしろみ。味わい。「芸にが出る」
異性間の情事に関すること。「事」
[類語]光沢色つや黒光り底光り艶やかつるつるてらてらてかてか艶めく艶々しい

えん【艶】

[名・形動]
あでやかで美しいこと。なまめかしいこと。また、そのさま。「を競う」「な姿」
情趣に富むさま。美しく風情のあるさま。
「月隈なくさしあがりて、空のけしきも―なるに」〈・藤袴〉
しゃれているさま。いきなさま。
「鈍色の紙の、いとかうばしう―なるに」〈・澪標〉
思わせぶりなさま。
「いとこそ―に、われのみ世にはもののゆゑを知り、心深き、たぐひあらじ」〈紫式部日記
中世の歌学や能楽における美的理念の一。感覚的な優美さ。優艶美。妖艶美ようえんび
「詞のやさしく―なるほか、心もおもかげも、いたくはなきなり」〈後鳥羽院御口伝

あで【艶】

[形動][文][ナリ]《「あて(貴)」の音変化》色っぽくなまめかしいさま。あでやか。「香り高く蘭がに咲く」「姿」

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普及版 字通 「艶」の読み・字形・画数・意味


28画

(異体字)艶
人名用漢字 19画

[字音] エン
[字訓] うつくしい・あでやか

[説文解字]

[字形] 会意
豐+盍。〔説文五上に「好にして長(たけたか)し」とし、「豐に從ふ。豐は大なり。盍(かふ)聲」とするが、声が合わない。豐は俎豆に穀物を盛って神に供薦すること。盍は蓋物の形。神薦の美をいう。

[訓義]
1. うつくしい、いろふかし。
2. 婦人の美しさをいう。あでやか、なまめかしい、美しくたけ高し。
3. いろ、つや、つややか。婦人の顔色の美しいことをいう字となり、艷・艶としるす。
4. 楚調の歌辞の名。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕艷 以呂布加之(いろふかし) 〔名義抄〕艷・ ヤサシ・ウルハシ・ナマメイタリ・ナヨヨカナリ/艷イロフ・ウルハシ・コヒ

[語系]
jiam、婬jim、冶ji)jikは声義に通ずるところがある。

[熟語]
姿
[下接語]
・婉・花・閑・奇・綺・嬌・軽・光・紅・香・絶・繊・鮮・濃・繁・美・富・豊・明・冶・妖・冷


常用漢字 19画

(旧字)艷
24画

(異体字)
28画

[字音] エン
[字訓] うつくしい・あでやか

[字形] 会意
正字はに作り、豐+盍。〔説文〕五上に「好にして長(たけたか)し」とあり、〔玉〕に「、俗に艷に作る」とみえる。

[訓義]
1. うつくしい。
2. あでやか。字条参照。

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改訂新版 世界大百科事典 「艶」の意味・わかりやすい解説

艶 (えん)

元来は,容色の美しいのを意味する漢語で,怨情,媚態,華美,みやび,技巧性,離隔性などあれこれ用いられる。日本でも,《源氏物語》《枕草子》などでは,華麗優雅な上品さ,ほのぼのとした情趣,色めかしさなどの意に用いられた。平安時代の貴族的美意識を反映した語である。歌学用語としても,平安時代すでに歌合判詞や歌論の類に見え,しだいに和歌美的範疇を表す評語となる。藤原俊成の意識した艶の美には,《源氏物語》の〈もののあはれ〉を受け継ぎ,さらに余情美を求めようとする傾斜が認められる。中世以降には艶を内面化しようとする傾向が強まり,心敬の連歌論《ささめごと》などに見える〈心の艶〉〈冷艶〉の美は,その極致とされる。艶の句について,〈艶といへばとて,ひとへに句の姿,言葉のやさばみたるにはあるべからず。胸のうち人間の色欲もうすく,よろづに跡なき事を思ひしめ,人の情を忘れず,其の人の恩には,一つの命をも軽く思ひ侍らん人の胸より出でたる句なるべし〉(《ささめごと》)とある。艶は,日本古典文学論の中心的理念に関与する,重要な美の一つであった。
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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「艶」の解説

えん

?-? 江戸時代前期,南部行信(ゆきのぶ)の側室
陸奥(むつ)盛岡の材木商岩井与市郎の娘。寛文5年(1665)キリシタン弾圧で処刑された父の晒(さらし)首をもちかえり円光寺で供養する。自身はキリシタンではなく,孝心からのおこないだったためゆるされ,さらに盛岡藩主行信の側室となり信恩(のぶおき)(のち6代藩主)を生んだ。通称はお蓮。法名は慈恩院。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「艶」の意味・わかりやすい解説


えん

日本文学における美意識の一つ。上品なあでやかさ,つやのあるはなやかな美などをいう。『天徳歌合』『源氏物語』をはじめ,室町時代にいたるまで,物語,随筆,歌論にみられる。室町時代には心敬が「氷ばかり艶なるはなし」 (『ひとりごと』) といい,内面的に深化した艶に美の理想をみた。

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