行脚(読み)アンギャ

デジタル大辞泉 「行脚」の意味・読み・例文・類語

あん‐ぎゃ【行脚】

[名](スル)《「あん(行)」は唐音
仏道修行のために、僧侶諸国を歩き回ること。「雲水行脚
ある目的で諸地方を巡り歩くこと。「遺跡を行脚する」
[類語]歩く旅行ぶらつくほっつく散歩散策逍遥しょうよう漫歩漫遊巡歴跋渉ばっしょう巡回巡行足任せそぞろ歩き遊歩杖を遍歴遊行

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精選版 日本国語大辞典 「行脚」の意味・読み・例文・類語

あん‐ぎゃ【行脚】

〘名〙 (「あん」は「行」、「ぎゃ」は「脚」の唐宋音)
① 仏語。禅僧が諸国を巡って修行すること。また、その僧。頭陀(ずだ)。雲水。遊行(ゆぎょう)抖擻(とそう)
※正法眼蔵(1231‐53)行持上「はじめて発心求道をこころざす。瓶錫(びゃうしゃく)をたづさへて行脚し」 〔釈氏要覧‐下・八衆〕
② 徒歩で諸国を旅すること。また、その人。
上杉家文書‐(年未詳)(室町)一二月一六日・長尾顕景書状「可上方行脚外無他候」 〔項斯‐送僧詩〕
③ 死ぬこと。示寂。
蔭凉軒日録‐文正元年(1466)三月一八日「大元和尚〈略〉於大雲祖塔入寂。于時喚小児紙筆曰、我己即刻可行脚

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改訂新版 世界大百科事典 「行脚」の意味・わかりやすい解説

行脚 (あんぎゃ)

中国で禅僧が行雲流水のごとく天下を遊行することをいい,これを唐宋音で読んだものである。僧は本来無一物となって一所不住の頭陀抖擻(ずだとそう)すべきものであるから,修行時代の禅僧はいわゆる雲水となって,行脚しなければならない。その間に明師に会えば,僧堂会下(えか)に一時とどまることもあるが,そこに定住することは許されない。その行脚には直綴(じきとつ)を着て脚絆,草鞋をつけ,頭陀袋または三衣(さんね)袋を肩に掛け,鉄鉢(てつぱつ)をささげて大きな檜笠をかむる。手に錫杖を持つこともあるので,道元は〈はじめて発心求道をこころざす。瓶錫(びようしやく)をたづさへて行脚し〉(《正法眼蔵》行持)とのべている。これをまた一杖一笠の行脚ともいう。しかし禅僧の場合は大悟徹底が目的であるから,行脚は歩々これ道場の修行であった。併せて樹下石上に宿して心身を鍛え,煩悩(ぼんのう)を滅却して解脱を期した。行脚の間の生活の資は托鉢によって得たので,僧堂では今も雲水は日を定めて行脚托鉢する。
雲水
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「行脚」の意味・わかりやすい解説

行脚
あんぎゃ

仏教僧が一定の寺院にとどまることなく、広く仏道の師友を求め、また教化のために諸国を遍歴(へんれき)すること。遊行(ゆぎょう)、遊方(ゆほう)と同義。求法証悟(ぐほうしょうご)(仏教を求め、悟ること)を目ざし、人情を脱し煩悩を断つため、広く山川を巡って参禅聞法したり、あるいは大衆に布教する仏道の実践で、おもに禅宗における修行方法である。このような修行者を行脚僧といい、また行雲流水に例えて雲水(うんすい)ともいう。行脚は、所定の修行期間を除いた解間(げあい)という時期に、頭陀行(ずだぎょう)の精神に基づく一定の規矩(きく)のもとに行われた。転じて、俳人たちの諸国旅行のことをもいう。

[石川力山]

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普及版 字通 「行脚」の読み・字形・画数・意味

【行脚】あんぎや

僧が遊行する。

字通「行」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「行脚」の意味・わかりやすい解説

行脚
あんぎゃ

僧侶が修行または布教のためにいろいろな地方を歴訪すること。また歌人などが行う創作しながらの旅行をもいう。

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世界大百科事典(旧版)内の行脚の言及

【雲水】より

…また,雲水僧の略で,雲のごとく定まった住所もなく,水のごとく流れゆきてよる所もないように,諸方の禅師を訪ねて遍歴し,道を求める修行僧をいう。雲衲(うんのう),行脚(あんぎや)とも称す。雲水は,網代笠(あじろがさ)をかぶり,袖の長い雲水衣(直綴(じきとつ))をきて,腰に手巾(しゆきん)と称する丸ぐけの腰紐をしめる。…

【遊行上人】より

…遊行は,本来修行僧が衆生教化と自己修養のために諸国を巡歴することで,仏教の修行の主要なものの一つであった。飛錫,巡錫などの語でもあらわし,禅宗では行脚の語を多く用いる。平安時代には山野を抖擻(とそう)する聖(ひじり)があらわれ,修験道では遊行が重んぜられた。…

※「行脚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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