要害(読み)ようがい

精選版 日本国語大辞典 「要害」の意味・読み・例文・類語

よう‐がい エウ‥【要害・用ヨウ害】

〘名〙
① (味方にとっては要で敵には害となるの意) 地勢がけわしく、守りやすく攻めにくい所。
※続日本紀‐大宝二年(702)一〇月丁酉「於国内要害之地。建柵置戍守之」 〔史記‐始皇帝本紀〕
② ①のような地点に築いた城塞。また一般に、堅固な要塞。とりで。また、その防備
吾妻鏡‐養和元年(1181)三月一三日「相待平氏襲来。就中。請命向橋本。欲要害之間。召人夫之処」
③ からだの中で命にかかわる大切なところ。急所。〔後漢書‐来歙伝〕
④ (━する) 防御のための設備をすること。そなえておくこと。用心すること。
※虎寛本狂言・鼻取相撲(室町末‐近世初)「『鼻に要害を致ては何とでござらう』『是は一段と能(よか)らう。急いで要害をして呉(くれ)い』」
⑤ 必要の場合にそなえて支度すること。用意すること。また、そのもの。
歌舞伎・綴合新著膝栗毛(1863‐80)二幕「毎年牡丹餠を拵(こしら)へるから、砂糖の要害(エウガイ)でもせずばなるめえ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「要害」の意味・読み・例文・類語

よう‐がい〔エウ‐〕【要害】

地形がけわしく守りに有利なこと。また、その場所。「―の地」「―堅固な城」
戦略上、重要な場所に築いたとりで。要塞ようさい。「天然の―」
防御すること。用心すること。
「お侍様方の二腰は身の―」〈浄・千本桜
[類語]天険険難険阻険峻峻険急峻険要険所険しい峻峭峻抜峻岳峻峰峻嶺高峰高嶺奇峰

ぬみ【要害/要】

攻防上で重要な地点。要衝。ぬま。
賊虜あだどもる所は皆是―のところなり」〈神武紀〉
たいせつなこと。要点。ぬま。
はかりことの―を宣示のたまひしめして先づ当郡の兵を発せ」〈天武紀〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「要害」の読み・字形・画数・意味

【要害】よう(えう)がい

険要の地。漢・賈誼〔過秦論、上〕南は中を取り、西は巴蜀を擧げ、東は膏腴(かうゆ)の地を(さ)き、(北は)の郡を收む。懼し、會して秦をめんことを謀り、~合從(がつしよう)してはりを(むす)び、相ひ與(とも)に一と爲る。

字通「要」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「要害」の意味・わかりやすい解説

要害 (ようがい)

防御・戦闘性に富んでいること,またはそうした場所を表す語で,〈要害の地〉〈要害堅固〉などと用いるが,中世城郭用語としては,ある種の城を指す場合と,城内の特定部分を指す場合とがある。前者は砦(取出),堡などと同じく,居城や根小屋に対置して,臨時に詰める戦闘本位の城郭を呼ぶ場合に用いる。後者は〈城中ノ要害〉(《難波戦記》),〈取出の要害〉(《家忠日記》)のように,城の内部でとくに戦闘機能の高い区画を指した。今日の城郭研究においても,城域を居住部分と要害部分に分けて論ずることがある。近世では仙台藩一国一城の制の下で,仙台城以外の城を要害の名で存続させた事例があるが,これは砦などと同じ用例である。また〈ようがい〉の音が〈ゆうがい〉〈りゅうがい〉に転じて,〈竜ヶ谷〉などの地名になる場合がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の要害の言及

【城】より

… 国人領主の山城は,麓の館(根小屋(ねごや))とセットになっているのが普通である。館が平時の居住施設であるのに対して,山城は戦時に詰める軍事施設(要害)である。南北朝期の山城が広域の戦略上の必要から高くて不便な山に築かれたのに対して,室町時代の国人の山城は,所領支配の拠点という在地に密着した性格を持っていたので比較的低く(多くは比高100m台),集落と連絡しやすい山に築かれた。…

※「要害」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android