金襴手(読み)キンランデ

デジタル大辞泉 「金襴手」の意味・読み・例文・類語

きんらん‐で【金×襴手】

色絵の上に金彩色を施した磁器中国、明代に流行し日本に輸入された。器物は碗が最も多い。

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精選版 日本国語大辞典 「金襴手」の意味・読み・例文・類語

きんらん‐で【金襴手】

  1. 〘 名詞 〙 色絵に金彩を加え、より一層華美にした磁器。金焼付(鎗金(そうきん))の技術は宋代に既に知られていたが、金襴手は明代の景徳鎮の民窯で最も発達した。遺品は日本に多く、五彩金襴手、赤地金襴手、緑地萌葱)金襴手ほかがあり、碗がもっとも多い。これにならった日本のものでは、偕楽園焼永楽保全の作が著名
    1. [初出の実例]「番茶汲む中でほり出す金襴手」(出典:雑俳・楊梅(1702))

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改訂新版 世界大百科事典 「金襴手」の意味・わかりやすい解説

金襴手 (きんらんで)

金彩色絵磁器のこと。中国江西省景徳鎮民窯で16世紀中ごろ(明代嘉靖年間)に作られた。上絵付した後,金箔を焼き付けて文様を表したもので,織物の金襴に似ているところから日本でこう呼ばれた。また広義には金泥を用いたものも含み,装飾技法の名称としても用いられる。金襴手の磁器には地釉(じぐすり)の別によって,五彩(赤絵)に金彩を加えた赤絵金襴手,赤を地釉に用いた赤地金襴手,瑠璃釉(るりゆう)上に金彩を加えた瑠璃地金襴手,その他萌葱(もえぎ)地金襴手,黄地金襴手,白地金襴手などがある。赤地や赤絵金襴手の作例が最も多い。器種は碗,壺,瓶,水注,香炉のほか,イスラムの金属製水注の器形を模した仙盞瓶(せんさんぴん),瓢形瓶などに優品が多い。金彩の文様には具象的文様は少なく,宝相華や牡丹唐草など吉祥文や花鳥文が多い。特に日本には優品が伝存し,珍重された。近世後期以降,新興町人層の好みに合い,京焼や有田焼などでも模造されている。
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百科事典マイペディア 「金襴手」の意味・わかりやすい解説

金襴手【きんらんで】

上絵(うわえ)付けした陶磁器に,さらに金泥(きんでい)や金箔(きんぱく)の文様を施したもの。織物の金襴からきた名称。中国では【そう】金(そうきん)といい,明代嘉靖期の作が最もすぐれている。日本でも京焼伊万里焼などに見られる。
→関連項目赤絵永楽保全加藤土師萌九谷焼

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金襴手」の意味・わかりやすい解説

金襴手
きんらんで

金彩文様のある色絵磁器のことで、五彩ともいう。陶磁器に主として金箔(きんぱく)文様を加飾する華麗な色彩効果はすでに唐代に、土器に行われたが、北宋(ほくそう)代に定窯(ていよう)で試みられた金花(金箔文様の焼付け)技術が磁器では最初と目される。元(げん)以後は景徳鎮窯でやはり金襴手が焼かれている。とりわけ明(みん)代嘉靖(かせい)年間(1522~66)には白磁五彩地にさらに金箔文様を焼き付ける絢爛(けんらん)たる装飾法が流行して、この磁器がとくに金襴手と日本で呼び習わされた。この嘉靖金襴手は、江戸時代の中期、18世紀に日本で大いに愛好されるようになり、一世を風靡(ふうび)し伊万里(いまり)焼もこの金襴手に倣って独自の伊万里金襴手をつくりあげ、大流行を遂げた。

[矢部良明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金襴手」の意味・わかりやすい解説

金襴手
きんらんで

陶磁用語。赤絵色絵などに金彩を加えたもの。色釉と金との配色が織物の金襴の趣に似ているところから,この名が出た。中国宋代に始り,明・清代に極度に発達,この刺激により日本では江戸時代中期から作られた。京焼の名工,永楽保全の偕楽園時代の作品に金襴手の名品が多い。

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世界大百科事典(旧版)内の金襴手の言及

【赤絵】より

…まだ明代初期の赤絵については不明な点が多いが,15世紀には成化の豆彩(とうさい)(闘彩)として現れ,その後は日本で古赤絵と呼ぶ嘉靖期(1522‐66)以前の民窯の赤絵として量産された。続く嘉靖年間は赤絵の全盛期で民窯では金襴手,官窯では白磁や青花磁に五彩を加えたものを中心に,色釉地に色釉文様を加えた雑彩と呼ぶ濃麗な作品も作られた。万暦年間(1573‐1619)には官能的で濃艶な赤絵が作られ,日本の茶人はこれを万暦赤絵と呼んで珍重した。…

【永楽保全】より

…43年(天保14)には家督を息子仙太郎(後の和全,1823‐96)に譲り,善一郎と改名,48年(嘉永1)に保全を称した。保全は中華趣味,文人趣味の流行に従い,金襴手,祥瑞(しよんずい),交趾,呉須赤絵など中国陶磁を主流に高麗写しや仁清,古清水写しなどを手がけた。とくに金襴手は得意で,金泥を用いながら金箔を用いた中国金襴手に劣らない豪華さを表し,交趾釉も明代の法花の技法を学んで,明るく都会的な作風を生み出した。…

※「金襴手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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