長老(読み)チョウロウ

デジタル大辞泉 「長老」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐ろう〔チヤウラウ〕【長老】

年老いた人を敬っていう語。特に、経験が豊かで、その社会で指導的立場にある人をいう。「村の長老」「財界の長老
年長で徳の高い僧。禅宗で、住持の僧。また、律宗では、主管者。
初期のキリスト教会指導者。使徒に次いで重んじられた。現在では長老派教会での信徒の代表。教会を代表し信徒の訓練に当たる。
[類語]古老老大家老人年寄り老体隠居ロートル・年配者・高齢者老いシニア老いぼれ老輩老骨

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精選版 日本国語大辞典 「長老」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐ろうチャウラウ【長老】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 年をとった人を敬っていう語。経験が豊かで知徳のすぐれた指導的な立場にある人。
    1. [初出の実例]「誰遺尊長老、貴眉寿乎」(出典:性霊集‐一〇(1079)暮秋賀元興寺僧正大徳八十詩・序)
    2. 「年若き者は何事も差控て長老を敬す可しとのことなり」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉三)
    3. [その他の文献]〔史記‐文帝本紀〕
  3. 仏語。
    1. (イ) ( [梵語] sthavira の意訳 ) 比丘中の修行・学徳にすぐれた年長の大比丘。上座、上首、首座などともいう。
      1. [初出の実例]「寝食を忘て、終夜学問する僧、少々侍し、時々制してやすめなと、長老被申し」(出典:雑談集(1305)九)
      2. [その他の文献]〔長阿含経‐八〕
    2. (ロ) 禅宗や律宗で、住持、和尚(おしょう)を敬っていう言葉。また、特別の地位の称として、管長を退いた高僧にいう例がある。
      1. [初出の実例]「暁は四更の二点三点よりをきて坐禅す。長老ともに僧堂裏に坐す」(出典:正法眼蔵随聞記(1235‐38)二一)
  4. 初期キリスト教会で、使徒につぐ教会の指導者。また、長老教会における信徒代表をいう。
    1. [初出の実例]「言を伝へ教をなして労する長老(チャウロウ)を殊に尊むべし」(出典:引照新約全書(1880)提摩太前書)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「長老」の意味・わかりやすい解説

長老
ちょうろう

一般には,年とった人に対する尊称。経験,徳行ともにすぐれた年長者をいうが,宗教用語として次のものがある。 (1) sthavira 仏教では,出家者のうちで,智慧があり,徳行が高い人の尊称。必ずしも年老いている必要はない。日本では,鎌倉や京都五山の住持の称として用いられる。 (2) presbyteros キリスト教職制の一つ。元来政治集団の年長の指導者。古代イスラエルでも,他のセム族同様長老があり,モーセと民の仲介者として,のちには宗教・政治共同体の指導者として支配。原始キリスト教もこの制度を採用したらしく,エピスコポス (のちの司教) とともに地域教会の指導者として言及され,しばしば両者の区別は困難で,詳しい機能も不明。2世紀以降,司教司祭助祭の3階層が確立するにつれ長老は司祭と同一視された。 16世紀の宗教改革で,ある教会では長老職が復活。特に長老派諸教会では,牧師である教職としての長老と会衆を牧する牧師を補佐する者として会衆から選ばれた平信徒の長老とがある。

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普及版 字通 「長老」の読み・字形・画数・意味

【長老】ちようろう(ちやうらう)

学徳ある人。また、老年の人。〔漢書、文帝紀〕今の首(はじ)め、時ならず。人をして長老を存問せしむ。布帛(ふはく)・酒の賜無くんば、將(は)た何を以てか天下子孫を佐(たす)け、其の親に孝せしめんや。

字通「長」の項目を見る

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改訂新版 世界大百科事典 「長老」の意味・わかりやすい解説

長老 (ちょうろう)
elder
presbyter

古来,家族や部族の年長者が社会的代表者・指導者の位置を占めることが多い。これを長老と呼ぶ。キリスト教会の職務としても古くからあり,カトリック教会の司祭を意味する英語プリーストpriestもpresbyterと同語源である。プロテスタント教会の中で,長老によって教会的な行為を執行する制度をもつものに,長老派教会がある。これらの職務においては,年長であることが不可欠の条件となってはいない。
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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「長老」の解説

ちょうろう【長老】

京都の日本酒。酒名は、長老山に由来し、幾久しく長寿を願う意味を込めて命名純米吟醸酒、純米酒、本醸造酒、普通酒などがある。原料米は主に五百万石。仕込み水は長老山系の伏流水。蔵元の「長老」は明治36年(1903)創業。所在地は船井郡京丹波町本庄ノヲテ。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の長老の言及

【ニワトコ】より

…山野のやや湿ったところに生えるスイカズラ科の落葉低木(イラスト)。庭木として植えられたり,切花にされる。高さ3~6m,枝には太く柔らかい髄がある。葉は羽状複葉で小葉は5~7枚。花は枝の先に多数集まって円錐状となり,長さ幅とも3~6cm,4~5月に咲く。萼裂片は著しく退化し,花冠は淡黄色,5裂し,そり返る。子房は下位で3室,各室に1胚珠が下垂する。液果は夏に赤く熟し,鳥が食べる。日本,朝鮮,中国に分布する。…

【サイイド】より

…〈長老〉などを意味するアラビア語。奴隷に対する主人,妻に対する夫などを指す語から転じて,集団の長老格の人物を指す。…

【司祭】より

…新約聖書のギリシア語プレスビュテロスpresbyteros(長老)という言葉から生じたキリスト教会の役職。按手によって使徒から受けた職制として,聖書には監督との上下の区別は明らかではない。…

【住職】より

…住職という呼称は,今日では宗派を問わず多く用いられているが,歴史的にみると,寺院最高位の僧職の呼称は時代により宗派により,またそれぞれの寺院によって,さまざまの異称や尊称がある。南都系や平安仏教系寺院では寺主(じしゆ),維那(いな),院家(いんけ),隠元(いんげん),浄土真宗や日蓮宗(法華宗)や時宗では上人(しようにん),禅宗では方丈,和尚,住持,長老(ちようろう)などの,住職をさす尊称がそれである。また,由緒ある大寺院ではその寺固有の歴史的呼称もある。…

【聖職者】より

…聖職者の起源は必ずしも明らかでなく,またユダヤ教の祭司の権威と職能がどこまでキリスト教に受け継がれたかについても議論がある。すでに新約聖書のなかに監督(エピスコポス),長老(プレスビュテロス),執事(ディアコノス)の名称が見えているが,2世紀はじめのイグナティオスの書簡によれば,この3者がはっきり区別され,主教司祭助祭の3聖職の原型が成立していたと考えられる。このうち主教は教区の統轄者,司祭はミサ(聖餐式)を中心とする祭儀の執行者,助祭は主教および司祭の補助者である。…

【長老派教会】より

…〈プレスビテリアン・チャーチ〉ともいう。教会組織に長老制度を採用しているところから,この名称が生まれた。すなわち末端の各個教会においては牧師のほかに教会員から選出された一定数の長老presbyterが運営に参加し,それらの教会が地方ごとに長老会を組織し,さらに数地方の長老会をもって大会がつくられ,その上に全国総会がおかれるという,階層的な教会組織をつくっているのが特徴的である。…

※「長老」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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