高欄(読み)コウラン

デジタル大辞泉 「高欄」の意味・読み・例文・類語

こう‐らん〔カウ‐〕【高欄】

宮殿神殿などのまわりや、橋・廊下などの両側につけた欄干らんかん擬宝珠ぎぼし高欄・はね高欄などがある。勾欄こうらん
いすのひじ掛け。
御倚子ごいしにうちかけられて、―折れにけり」〈岩瀬本大鏡宇多
牛車ぎっしゃ前後の、口の下のほうに張り渡した低い仕切りの板。とじきみ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「高欄」の意味・読み・例文・類語

こう‐らん カウ‥【高欄】

〘名〙
① 宮殿、堂舎などのまわりや橋、渡り廊下などの両側などに設けた欄干勾欄
※延喜式(927)四「修餝神宮調度、〈略〉高欄鳥居丸桁端金十管」 〔梁元帝‐後臨荊州詩〕
② 椅子のひじかけ。
※岩瀬本大鏡(12C前)一「殿上の御椅子(ごいし)の前にて、業平中将と相撲(すまひ)とらせ給けるほどに、御椅子に打ちかけられて、かうらむ折れにけり」
牛車(ぎっしゃ)の部分の名称。車の前後の口に、下に張り渡した低い仕切り板。軾(とじきみ)。〔延喜式(927)〕
[語誌](1)「勾欄」とも書くが、本来は、転落を防ぐ欄干の意で「勾欄」、高い欄干の意で「高欄」といったと思われる。
(2)中国では「勾欄」が多いが、中世以前の日本では「高欄」がほとんどで、仮名では「かうらん」と表記されている。「かう(高)」と「こう(勾)」の発音が区別されなくなった近世以降、中国の文献の影響を受けて日本でも「勾欄」が多くなった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「高欄」の意味・わかりやすい解説

高欄 (こうらん)

縁,基壇,階段などの端に設ける装飾と安全を兼ねた手すりで,〈勾欄〉とも書かれる。古語では〈おばしま〉。下から地覆(じふく),平桁(ひらげた),架木(ほこぎ)の横材が斗束(ますづか)に支えられ,斗束の間に平桁を支える栭束(たたらづか)がある。隅や端の納まりによって,親柱をたて上に擬宝珠(ぎぼし)をおく〈擬宝珠高欄〉,親柱を使わず架木先端を長く,平桁と地覆先端をわずかに出す〈組高欄〉,架木先端をそらせる〈刎(はね)高欄〉などがある。階段には登り高欄を用い,昇り口には袖高欄をつける。地覆と平桁間には卍(まんじ)崩し(法隆寺金堂)や横連子(よこれんじ)(薬師寺東塔)などの組子や,幕板(まくいた),彫刻した板を入れるものもある。禅宗様では,親柱に蓮の葉を様式化した逆蓮柱,斗には握蓮(にぎりばす),開口部では架木先端をくねらせた蕨手(わらびて)とする。

 高欄は,中国では漢代の画像石や明器の建築にすでにみられ,敦煌壁画のものは親柱には擬宝珠があり,その間の架木上に宝珠飾が据えられる。これは伊勢神宮正殿の高欄にみられる五色の居玉の源流であろう。日本古代の実例では,法隆寺西院伽藍,薬師寺東塔や東大寺法華堂八角仏壇などがある。かんたんなものは家屋文鏡(奈良佐味田宝塚古墳出土)の高床家屋の梯子(はしご)にそえて描かれたものが古い。

 石造橋の高欄では,中国隋代の趙県安済橋(605ころ)の高欄が古く,一石でつくられ羽目の彫刻が優れている。韓国では慶州仏国寺多宝塔(751ころ)に石造高欄がみられる。これは石材で木造と同様な構造をつくったものである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「高欄」の意味・わかりやすい解説

高欄【こうらん】

勾欄とも記。宮殿,寺院などの回り縁,橋の両側,須弥(しゅみ)壇の周囲など,人が落ちないよう,また意匠的美観から設ける手すり。3段の横木からなり,柱頭に擬宝珠(ぎぼし)をつけたものを擬宝珠高欄,すみに擬宝珠がなく端部の先端をはね出したのを刎(はね)高欄と呼ぶ。
→関連項目春日造バルコニー欄干

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「高欄」の意味・わかりやすい解説

高欄
こうらん

日本建築で縁や廊下、あるいは橋につく欄干をいう。勾欄(こうらん)とも書く。高欄の横材は上から架木(ほこぎ)、平桁(ひらげた)、地覆(じふく)と3本通り、平桁を通して地覆から架木を支える材を斗束(とづか)、中間で平桁だけを支える材を栭束(たたらづか)という。高欄の隅は、架木、平桁、地覆を組み合わせるものと、親柱(おやばしら)を立てるものがあり、前者を跳(はね)高欄(刎(はね)高欄)、後者を擬宝珠(ぎぼし)高欄とよび、また、階段両脇(わき)につくものを登(のぼり)高欄、入口両脇につくものを袖(そで)高欄とよぶ。

[工藤圭章]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高欄」の意味・わかりやすい解説

高欄
こうらん

勾欄とも書く。建物の縁,須弥壇などの端にある手すり,欄干。地覆 (じふく) ,平桁 (ひらげた) ,架木 (ほこぎ) の3つの水平材から成る。架木の先端がまっすぐなものを組高欄,そり上がっているものを刎 (はね) 高欄,隅あるいは端に擬宝珠 (ぎぼし) 柱を立てたものを擬宝珠高欄という。禅宗様建築では擬宝珠の代りにハスの花をつけ,架木の端部が蕨手 (わらびで) となって地覆まで下がる。平桁,地覆間に装飾を入れたものもある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

普及版 字通 「高欄」の読み・字形・画数・意味

【高欄】こうらん

勾欄。

字通「高」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の高欄の言及

【欄干】より

…橋または建物の外縁などに縦横に材をわたして,人の墜落を防ぐ手すりで,装飾を兼ねるものもある。高欄(こうらん)に同じ。闌干とも書く。…

※「高欄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android