コーポレートガバナンスコード(読み)こーぽれーとがばなんすこーど(その他表記)corporate governance code

デジタル大辞泉 の解説

コーポレート‐ガバナンス‐コード(corporate governance code)

上場企業が実効的なコーポレートガバナンスを実現するための主要な原則を取りまとめたもの。企業統治指針

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

コーポレートガバナンス・コード
こーぽれーとがばなんすこーど
corporate governance code

上場企業が守るべき企業統治の行動規範。企業家精神に富んだ経営を行い、利益を長期的成長につなげたり、従業員や株主へ還元したりするよう促すため、取締役会のあり方、役員報酬の決め方などを定めた指針である。英語の略称から「企業統治指針」「CGコード」ともよばれる。「コード」は規則を意味するが、「プリンシプルベース・アプローチprinciple-based approach」にのっとり、原則のみを示し、細部は各企業に任せる手法をとっている。また、法的拘束力のない自主規制ではあるが、「コンプライ・オア・エクスプレインcomply or explain」精神のもと、同コードを遵守するか、遵守しない場合には投資家などへ、その理由を説明しなければならない。1992年にイギリスで初めて設けられ、ドイツ、フランスなどヨーロッパ諸国のほか、シンガポール香港(ホンコン)などでも策定されている。日本では、政府が2014年(平成26)の「『日本再興戦略』改訂2014」にコーポレートガバナンス・コード策定の必要性を盛り込み、東京証券取引所(東証)と金融庁は2015年に日本版コーポレートガバナンス・コードを制定、上場企業に適用した。気候変動、人権や多様性(ダイバーシティ)の重視などのグローバル市場の潮流が反映され、ほぼ3年ごとに改定されている。

 日本版は「株主の権利と平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」の五つの基本原則のもと、83の原則が盛り込まれている。東証の上場企業には社外取締役を2人以上選任することが必要とされ、そのための取組み方針を開示すべきとしている。2018年の改定では、最高経営責任者の選任・解任に関する基準の明確化、女性や外国人などの、経営側だけでなく執行側管理職への登用、相互に株式を持ち合う政策保有株式の縮減などを求めた。2021年(令和3)の改定では、東証に誕生したプライム市場の上場企業に、(1)気候変動や人権に関する経営戦略や災害時の損失リスクなどの開示、(2)独立社外取締役を本社取締役の3分の1以上、子会社についてはその過半数を選任、などの要件を盛り込んだ。

 なお、コーポレートガバナンス・コードが上場企業を対象とするのに対し、機関投資家向けの行動規範にはスチュワードシップ・コードstewardship codeがある。これは、投資家と企業との建設的な対話を通じて企業の成長を後押しする目的がある。コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードは、企業価値の向上を促す車の両輪とされている。

[矢野 武 2023年4月20日]

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知恵蔵 の解説

コーポレートガバナンス・コード

上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の指針。2015年3月に金融庁と東京証券取引所が取りまとめ6月から適用が開始され、遅くとも年内には報告が求められる。株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うことなどを定めたもので、その実施を一律に義務付けるものではない。しかし「コンプライ・オア・エクスプレイン」として、何らかの事由でそれを実施(コンプライ)しない場合は、投資家にその理由を説明(エクスプレイン)することが求められる。
日本では長らく、企業活動を取締役会だけが掌握し、株主の利益を重視しないという傾向が指摘されていた。その帰結として、利潤を配当や設備投資、賃金などに反映することに消極的で企業の内部留保ばかりを膨らませてきたという批判があった。こうした企業風土に対して、国際競争力を高めることを狙い、第2次安倍政権の新成長戦略にコードの策定が盛り込まれた。コーポレートガバナンス・コードの基本原則は、「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダー(利害関係者)との適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」の五つ。取締役会については、社外取締役を2人以上置き、社外の意見を反映しやすくすることが求められる。ことに、グローバルに事業展開する企業では3分の1以上を社外取締役とするよう促すなど、合理的で公正な企業統治が行われることが要求される。
コーポレートガバナンス・コードは現在、主要国のほとんどで導入されているが、これが重視され始めたのは1990年代後半から。ことに、リーマン・ショックなどの金融危機が相次ぐと、金融機関などが過剰なリスクを抱える要因として、コーポレートガバナンスの欠如が指摘された。これによって、投資する側のスチュワードシップ・コード(資産運用受託者としての責任ある行動)と共に、投資を受ける側のコーポレートガバナンス・コードが重視されるようになった。日本の上場企業の株主総会は6月に集中する。コーポレートガバナンス・コードの適用を受ける企業は早急な対応が求められている。

(金谷俊秀 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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