山梨県中部、東八代郡(ひがしやつしろぐん)にあった旧町名(中道町(まち))。現在は甲府(こうふ)市の南部を占める一地区。旧中道町は1955年(昭和30)右左口(うばぐち)、柏(かしわ)の2村が合併して町制改称。町名は、往時甲州(山梨県)と駿(すん)州(静岡県)を結ぶ中道往還が町を縦貫していたことに由来する。2006年(平成18)甲府市に編入された。旧町域は甲府盆地の南縁、御坂(みさか)山地山麓(さんろく)の曽根(そね)丘陵と笛吹(ふえふき)川左岸の低地に位置する。古くは米作と養蚕を主とする農村であり、とくに養蚕は隣村の境川(さかいがわ)村(現、笛吹市)、豊富(とよとみ)村(現、中央(ちゅうおう)市)とともに盛んで、丘陵上のほとんどが桑園で占められていた。しかし、現在は果樹栽培が多い。丘陵には国指定史跡の銚子塚古墳(ちょうしづかこふん)・丸山塚古墳など古墳が20か所以上もあり、先史時代の遺跡も多く、甲斐風土記の丘(かいふどきのおか)(曽根丘陵公園)として整備され、県立考古博物館もある。国道140号が通じ、中央自動車道の甲府南インターチェンジがある。旧中道往還沿いには国道358号や甲府精進(しょうじ)湖線が設けられ、いまでは簡単に富士五湖方面に達することができる。
[横田忠夫]
『『中道町史』上下(1976・中道町)』
極端な見解や実践を離れる仏教哲学の基本的立場。サンスクリットでマドヤマー・プラティパドmadhyamā pratipadという。釈迦は最初の説法において,欲楽に耽ることと苦行に努めることを否定し,八正道によって修行すべしと説いた。これを〈苦楽中道〉という。このように中道は,二辺を離れることとして理解されるが,苦楽だけではなく,有無,断常,一異等の対立概念も二辺すなわち極端な見解とされ,それによって中道も多種となる。大乗の中観派の祖である竜樹は《中論》において,縁起と空性を中道とみなした。また,いっさいの法(存在)は世俗においては無ではなく有であり,勝義においては有ではなく無であるということが中道である,とも中観派は説いている。中国仏教においても中道の分類は多岐を極め,三論宗の吉蔵は,空にも有にもとらわれない無得正観(むとくしようかん)に住することを中道であるとし,また世俗の存在を実法は滅するが仮名は存続するので不常不断と見る〈俗諦中道〉,究極の立場から見れば不常でも不断でもなく空(無自性)なのだとする〈真諦中道〉,俗の立場にも究極の立場にもとらわれない〈二諦合明中道〉の3種を説いた。天台宗の智顗(ちぎ)は《中論》に基づいて空(存在には自性,実体はない),仮(ただし空も仮に説かれたことである),中(空にも仮にもとらわれない立場)の〈三諦円融〉を主張し,すべての存在に中道という実相が備わっているという〈一色一香無非中道〉を説いた。日本の法相宗においても,唯識派の三性説に基づいて,認識のあり方は,(1)実体と誤認する,(2)因縁によって生じたと見る,(3)実相をありのままに見る,の3種に分かれるが,これらは全体としては有でも無でもない中道をあらわすとする〈三性対望中道(さんしようたいもうのちゅうどう)〉等の説がなされた。
執筆者:松本 史朗
もともとは道の中央あるいは中庸公正な道の意であるが,政治用語としては,一般的に左右の政治勢力の中間に位置する政治的立場を指す。このような立場を標榜する政党が〈中道政党〉であり,この種の政党の典型としてあげられるのが,西ドイツのキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とドイツ社会民主党(SPD)の中間に立ち,1949-66年にはCDU/CSUとの,69年以降はSPDとの〈小連立〉に参加してきた自由民主党(FDP)や,社会主義なしの社会改革を主張し,政治的スペクトル上で保守党と労働党の中間点を占めるイギリス自由党,さらに労働党よりは穏健で保守党ほど保守的でない立場を唱えて労働党からの離脱者を中心に81年3月に結成されたイギリス社会民主党などである。日本で中道勢力をめぐる論議が盛んになってきたのは,1970年代後半以来の1955年体制崩壊期においてで,〈55年体制〉下の保守・革新の二分法的政治勢力配置状況のなかで,その中間に立つ第三勢力として台頭してきた諸政党が中道勢力と呼ばれてきたが,とくに公明,民社,社会民主連合のみを指して〈中道3党〉という場合と,これに新自由クラブを加えて〈中道4党〉という場合がある(新自由クラブは1986年解党)。また,79年12月に公明,民社両党間で合意が成立した〈中道連合政権構想〉では,共産党を連合政権の対象としないことを明示し,さらに〈自民党との連合または連立は行わない〉ことを党首確認事項として公表した。
執筆者:内田 満
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… 釈迦の時代のインドは,鉄器の利用により農産物が豊富になり富裕な商工業者が現れ,社会は爛熟し,旧来のベーダ,ウパニシャッドに基づくバラモン教に疑問をもつ自由思想家が多く輩出し,釈迦もその中の一人であった。その教義は,中道,四諦(したい),八正道,縁起,無我の諸説にまとめうる。中道とは当時の伝統的苦行主義と享楽的自由主義のいずれにも偏らない生き方をいう。…
※「中道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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