昭和期の小説家
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
小説家。神奈川県藤沢市に生まれる。父は藤沢宿、母は保土ケ谷(ほどがや)の由緒ある家柄の出。横浜紅蘭(こうらん)女学校在学中に関東大震災にあう。すべてが灰燼(かいじん)に帰す体験により、文学への関心を深める。習作時代に、永井龍男(たつお)、横光利一(よこみつりいち)、川端康成(かわばたやすなり)、堀辰雄(たつお)の知遇を得る。1939年(昭和14)『乗合馬車』『日光室』(ともに1938)で芥川賞(あくたがわしょう)を受賞。『乗合馬車』の題材は、近縁者の国際結婚の見聞によるものである。運命がもたらす人間の孤独と連帯の機微をとらえたこのモチーフは、さらに深化されて、娘の国際結婚に取材した『南への道』(1979~1980)などの作品にまで至る。老境に近い男女の心象を俳句の手法に近い抽象的な文体で描いた『歌枕(うたまくら)』(1973)によって読売文学賞を受ける。その後、円熟の域をみせた『誰袖草(たがそでそう)』(1979)により女流文学賞を受賞。ほかに『時雨の記(しぐれのき)』(1977)、『水鏡』(1980)、『綾の鼓(あやのつづみ)』(1985)などがある。1974年(昭和49)芸術院賞恩賜賞を受賞、1983年芸術院会員。
[岡 宣子]
『『中里恒子全集』全18巻(1978~81・中央公論社)』
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