〈南無阿弥陀仏〉と阿弥陀仏の御名(みな)を10ぺん唱えること。《無量寿経》には十念によって阿弥陀仏の極楽浄土に往生できると説かれ,浄土教義の重要な根拠となっている。この十念を,唐の善導は《観無量寿経》の〈至心に声をして絶えざらしめ,十念を具足して南無阿弥陀仏と称す〉の文によって十声の称念と解し(《観経疏》),法然も〈声はこれ念,念は即ちこれ声〉とのべ(《選択(せんちやく)本願念仏集》),十声ととらえている。浄土宗や時宗では,十念授与といって,僧が信者に十念を授けて阿弥陀仏と縁を結ばせる。僧と信者が同時に10ぺん唱えるのを同称十念といい,またさきに僧が1ぺん唱え,つぎに信者が1ぺん唱え,相互に唱えあって10ぺんめで同時に唱え終わるのを切(きり)十念という。浄土宗では葬式のとき,導師が引導のあとで〈南無阿弥陀仏〉という六字の名号を10ぺん唱える。臨終に十声念仏して極楽に往生することを十念往生という。ほかに10種の心念,仏の相好を10ぺん観想することなどを指す場合もある。
執筆者:伊藤 唯真
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…法蔵菩薩の誓願は漢・呉訳では24であるが,増広された魏訳の48願の形で親しまれている。なかでも第18願では,〈十方世界の衆生が心を専一にして(至心)深く信じ(信楽)極楽に往生したいと願い(欲生),わずか10回でも心を起こす(十念)ならば,必ず極楽に往生できる〉と説いている。この〈十念〉が10回の念仏と解され,中国,日本における念仏による往生の思想の根拠として重視されるにいたった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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