新興芸術派(読み)シンコウゲイジュツハ

デジタル大辞泉 「新興芸術派」の意味・読み・例文・類語

しんこうげいじゅつ‐は【新興芸術派】

昭和5年(1930)新興芸術派倶楽部として結成された文学者集団。反プロレタリア文学作家の大同団結を図り、芸術の擁護を訴えた。中村武羅夫なかむらむらお尾崎士郎舟橋聖一井伏鱒二いぶせますじ堀辰雄らが参加。翌年末に解消

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精選版 日本国語大辞典 「新興芸術派」の意味・読み・例文・類語

しんこうげいじゅつ‐は【新興芸術派】

〘名〙 昭和三年(一九二八)六月「誰だ? 花園を荒す者は!」を書いた中村武羅夫(むらお)を中心に、反マルクス主義の芸術を標榜(ひょうぼう)して集まった文学運動一派川端康成嘉村礒多龍胆寺雄をはじめ、舟橋聖一、今日出海、阿部知二小林秀雄、神西清、堀辰雄、深田久彌、吉行エイスケらも加わった。昭和四、五年にわたりプロレタリア文学に対して、モダニズム、新社会派などの文学を唱えた。

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百科事典マイペディア 「新興芸術派」の意味・わかりやすい解説

新興芸術派【しんこうげいじゅつは】

プロレタリア文学流行に対して興った反マルクス主義の文学流派。1929年《新潮》編集長中村武羅夫を中心に川端康成嘉村礒多尾崎士郎竜胆寺雄らで結成された〈十三人倶楽部〉を母体に,翌年舟橋聖一井伏鱒二ほか,モダニズム,芸術派の作家が参加して〈新興芸術派倶楽部〉が生まれた。これに集まった作家たちによっていわゆるエロ・グロ・ナンセンス時代の都市風俗の断面がさまざまな方向で小説化され,読物とされたが,間もなくいくつかの方向に分裂,消滅した。代表的な作品には竜胆寺の《放浪時代》がある。
→関連項目阿部知二新潮吉行淳之介

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改訂新版 世界大百科事典 「新興芸術派」の意味・わかりやすい解説

新興芸術派 (しんこうげいじゅつは)

昭和初年,反マルクス主義をかかげて結成されたモダニズムの文学集団。1928年,雑誌《新潮》の編集長だった中村武羅夫(1886-1949)は,評論《誰だ? 花園を荒す者は!》(のち同名の評論集に収録)を書き,純文学の花園を踏み荒らそうとするプロレタリア文学にたいする危機意識を表明したが,翌29年には,廃刊された《不同調》にかわって創刊された《近代生活》を中心に,中村が音頭をとって芸術主義の文学集団〈十三人俱楽部〉が結成された。主要なメンバーは,中村のほか,川端康成,竜胆寺雄(りゆうたんじゆう),浅原六朗,嘉村礒多,久野豊彦らである。この〈十三人俱楽部〉を母体として,翌30年には舟橋聖一,阿部知二,井伏鱒二,雅川滉(つねかわひろし)ら新人多数を加えた〈新興芸術派俱楽部〉が創立される。この二つの集団をあわせて新興芸術派と呼ぶが,その活動は《芸術ヴァラエテー》,新潮社版《新興芸術派叢書》などにまとめられている。いわゆるエロ・グロ・ナンセンス時代の都市風俗を軽快にスケッチするところにこの派の特色があるが,31年には新心理派と新社会派に分裂し,運動そのものは短命に終わった。代表作としては竜胆寺の小説《放浪時代》(1928),雅川の評論《芸術派宣言》(1930)などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新興芸術派」の意味・わかりやすい解説

新興芸術派
しんこうげいじゅつは

1930年前後に結成された文学者グループの名称。当時大勢力を誇ったプロレタリア文学に対抗して,新感覚派,モダニズム派,反マルクス主義者などが連合し,新しい芸術派を標榜したものである。川端康成,龍胆寺雄,嘉村礒多,岡田三郎,尾崎士郎らをメンバーとする「十三人倶楽部」が結成されて運動の中核となり,雑誌『新潮』の編集長中村武羅夫の援助を受けて活動を開始したが,まもなく内部分裂を起し,みるべき成果をあげないまま終った。

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