財政法(読み)ザイセイホウ

デジタル大辞泉 「財政法」の意味・読み・例文・類語

ざいせい‐ほう〔‐ハフ〕【財政法】

国または地方公共団体財政に関する法規総称。各種の租税法をはじめ、財政法2会計法・国有財産法地方財政法など。
国の財政に関する基本を定める法律。財政総則・会計区分予算決算雑則の5章からなる。昭和22年(1947)施行

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精選版 日本国語大辞典 「財政法」の意味・読み・例文・類語

ざいせい‐ほう‥ハフ【財政法】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 国または地方公共団体の財政に関する法の総称。各種の租税法、会計法、国有財産法、地方財政法など。〔仏和法律字彙(1886)〕
  3. 国の財政の基本を定める法律。国の予算の作成・執行、決算などに関する基本的な事項を規定。昭和二二年(一九四七)制定。→会計法

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「財政法」の意味・わかりやすい解説

財政法
ざいせいほう

広義には、憲法7章に定める財政諸条項(財政議会主義原則租税法律主義の原則など)、およびそれを具体化した財政諸法規の総称として用いられる。各種の租税法(所得税法法人税法消費税法国税通則法、国税徴収法など)、財政法、会計法、国有財産法、物品管理法、会計検査院法などがすべて含まれる。なお、ここでいう財政とは、国家の行政活動に必要な財源を確保し、これを管理、使用する作用をいう。この作用には、租税の賦課徴収のような財政権力作用と、税収を配分し、公の財産を管理する財政管理作用とが含まれる。

 狭義には、「財政法」という名の法律(昭和22年法律第34号)を意味する。財政法は、国の予算、その他の財政の基本に関して定めた法律である。財政の基本といっても、財政権力作用については、別に各種の租税法規などが完結的に定めるため、財政法は財政管理作用に関する基本法にとどまる。また、財政管理作用のうち、財産の管理作用については、財政法は若干の基本原則を定めるにとどまり、その詳細は、国有財産法、物品管理法、国の債権の管理等に関する法律などの定めるところとなっている。地方公共団体の財政運営については、地方財政法の定めるところによる。

 大日本帝国憲法明治憲法)下では財政法は存在せず、会計法のなかにおいて、収入・支出の手続に関する規定だけではなく、予算・決算制度などに関する規定も定められていた。第二次世界大戦後、赤字公債の濫発などへの反省をもとに、憲法の財政条項を具体化するための基本法として財政法が新たに制定されるに至った。財政処理の基本原則や、予算・決算制度については財政法の規律するところとなり、他方、収入・支出の手続などに関する技術的な規定は会計法において定めることとされたのである。

 財政法は5章47条からなり、その内容は、大別して、財政に関する基本原則、予算制度、および決算制度の三つに区別することができる。

 財政に関する基本原則には種々のものがあり、予算管理や会計処理の基本にかかわるものとして、会計年度独立の原則(12条)、予算単一の原則(13条)、総計予算主義の原則(14条)などが定められている。財政運営上の原則として、国債に関して、建設公債の原則(4条)、市中消化の原則(5条)などがある。これ以外にも、課徴金等の法定主義(3条)、現金以外の財産の処分の権限(8条、9条)、財政状況の国民および国会への報告(46条)などの定めがある。予算制度については、予算の種類、内容、作成、執行、繰越しなどに関する規定がある。決算制度については、決算の作成、剰余金の処理などに関する規定がある。

[田中 治]

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改訂新版 世界大百科事典 「財政法」の意味・わかりやすい解説

財政法 (ざいせいほう)

日本国憲法は国の財政処理の基本原則として議会主義の徹底化を図っているが(日本国憲法第7章),そのことをより具体化するため,国の会計処理の方法を定める会計法とは別に,財政運営に関する基本原則を定めた法律(1947公布)である。本法は,財政総則,会計区分,予算,決算,雑則の5章から成り,公債または借入金を原則として歳入財源より除外する等の健全財政主義を強調しつつ,国の財政運営の基本計画とも言うべき予算の単年度主義・総会計主義・公開主義等,国会による財政統制を実効あらしめる原則を定め,また,決算の国会提出等,財政民主主義の徹底化を図っている。もっとも,1952年の財政法改正によって,継続費繰越明許費が新設されて予算の単年度主義の例外が認められ,また,多数かつ多額の規模の特別会計の創設や政府関係機関および公団・事業団等の国の行政に密接な関係を有する特殊行政法人が創設されて,別途弾力的な財政運営が認められる等,国会の財政統制を実質的に形骸化する傾向が見られる。また,健全財政主義の点では,財政法4条が歳入財源の例外として認めるいわゆる建設公債が66年度より発行され,また1965年度に一度発行されたのに加えて75年度以降,一般会計の巨額の赤字を補塡するためのいわゆる特例公債(赤字公債)が継続して発行されており(1975-90年度,94-95年度),財政法を制定した本来の意味が改めて問われている。
財政 →地方財政法
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百科事典マイペディア 「財政法」の意味・わかりやすい解説

財政法【ざいせいほう】

財政に関する法規の総称,または同名の法律(1947年)をさす。後者は憲法第7章を受けて制定され,旧会計法の規定のうち財政の手続的規定を会計法に分離させ,財政の基本を定める。公債・借入金の原則的禁止等による健全財政主義,および国会による財政統制を実効あらしめる予算の単年度主義・総会計主義・公開主義,また決算の国会提出や暫定予算制度の導入などにより,憲法の財政民主主義を具体化している。

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知恵蔵 「財政法」の解説

財政法

財政制度の枠組みや、財政運営の基本原則を定めた法律。財政は民間企業会計と異なり、民主主義に基づいて運営されなければならない。財政法は日本国憲法の第7章で定められた財政民主主義に基づいて制定されている。そのため企業会計とは相違して、歳入・歳出をすべて予算に編入することを義務づける総計予算主義や、歳出はその年度の歳入によらなければならないことを定めた会計年度独立の原則などを規定している。財政運営については均衡財政を定め、財政法第4条で公債発行を原則禁止すると共に、「但し書き」で公共事業費や出資金及び貸付金について発行を認める建設公債原則を掲げている。

(神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「財政法」の意味・わかりやすい解説

財政法
ざいせいほう

実質的意義では財政に関する法規の総称。憲法中の財政に関する規定,財政法,国有財産法,物品管理法,国の債権の管理等に関する法律,会計検査院法,会計法,各種の特別会計法などの会計法規,租税法規,専売法規,その他多くの法律を包含する。形式的意義では,昭和 22年法律 34号をいう。国の予算その他財政の基本に関して定めた法律で,会計区分,予算決算など国家財政運営上の基本原則を定めている。

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世界大百科事典(旧版)内の財政法の言及

【国債】より

…戦時の物価統制が外されると,それは戦後のはげしいインフレを招いた。1947年,新憲法とともに成立した財政の基本法である財政法においては,原則として国債発行を禁止し,例外的な場合として認めているだけである。すなわち財政法4条は,〈公共事業費,出資金及び貸付金の財源については,国会の議決を経た金額の範囲内で,公債を発行しまたは借入金をなすことができる〉こととしている。…

※「財政法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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