エニック,L.(読み)えにっく

世界大百科事典(旧版)内のエニック,L.の言及

【自然主義】より

…しかし,この小説論は,その極端な立論を通して,少なくとも,素朴な熱情にも似た科学への信仰を共有することによって時代精神に適合した自然主義の一面,この文学思想の根底にある科学主義志向を最も端的に表し伝えている点で,自然主義の代表的文学理論の一つに数えられる。 1870年代の半ばごろからゾラの周辺に集まった自然主義派の若い作家たちは,会合の場所であったゾラの別荘がメダンにあったことから〈メダンのグループ〉と呼ばれるが,これに属するモーパッサン,J.K.ユイスマンス,H.セアール,L.エニック,P.アレクシの5人は,1880年,首領格のゾラとともにおのおの1編ずつの短編を持ち寄って作品集《メダンの夕べ》を公刊し,自然主義文学派の存在を強く印象づけた。これらの作家たちのほかに,自然主義派ないしそれに近い作家としては,日本にも早くから紹介されたA.ドーデ,O.ミルボー,劇作家H.F.ベックらがいる。…

【自由劇場】より

…パリのモンマルトルの一隅の小劇場での予約会員制の観客を前にした第1回公演で,ゾラ原作の《ジャック・ダムール》が空前の評判をとり,一躍自然主義演劇の中心となった。ついで,モンパルナス座からムニュー・プレジール座に移って一般公開にも踏み切り,G.deポルト・リッシュ(1849‐1930),E.ブリュー,F.deキュレル(1854‐1928),G.クルトリーヌ(1858‐1929),L.エニック(1851‐1935)などの劇作家を世に出し,L.トルストイの《闇の力》,H.イプセンの《幽霊》,G.ハウプトマンの《織工》など外国の近代劇でも成功を博した。その特徴は〈実人生の断片〉の舞台化という劇作家J.ジュリアン(1854‐1919)の主張を理論的支柱とし,書割りを排して実物の小道具を使い,観客と舞台との間に〈第四の壁〉を想定してときには観客に背を向けるという徹底した写実的演技演出にあった。…

※「エニック,L.」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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