オルガヌム(音楽)(読み)おるがぬむ

世界大百科事典(旧版)内のオルガヌム(音楽)の言及

【音楽】より

…中部フランスのリモージュ近郊にある聖マルシアル修道院は,1150年ころ,なかでも特に重要な中心であった(聖マルシアル楽派)。そのポリフォニーはオルガヌムorganumと呼ばれ,下声に長く引き伸ばされたグレゴリオ聖歌を置き,その上に自由なリズムで細かく動く上声を配した2声の楽曲であった。12世紀末からポリフォニーの中心地は北に移動し,13世紀末までパリのノートル・ダム大聖堂が特に重要な位置を占めた(ノートル・ダム楽派,パリ楽派)。…

【キリスト教音楽】より

…パリのノートル・ダム大聖堂の礎石は1163年にすえられたが,祭壇と内陣の部分がまず完成した12世紀末,ここにレオナンLéonin(レオニヌスLeoninus)とペロタンPérotin(ペロティヌスPerotinus)という2人の巨匠が姿を現す。彼らはグレゴリオ聖歌を基礎として,1~3声部の対位旋律をそれに重ね合わせるオルガヌムorganumと呼ばれる初期のポリフォニーの形式を確立した。その響きは,禁欲的な祈りの歌であったグレゴリオ聖歌に比べれば,はるかに華麗であり,ステンド・グラスの光彩を思わせる。…

【ノートル・ダム楽派】より

…それまでのポリフォニー音楽がグレゴリオ聖歌のリズムに準じていたのに対し,長短の音符の組合せによって3拍子を基本とする厳格なリズム体系を確立して音楽史に画期的な革新をもたらした。モーダル・リズムと呼ばれるそのようなリズム体系に基づいて12世紀後半の代表的作曲家レオナンLéonin(レオニヌスLeoninus)はグレゴリオ聖歌を定旋律としてそれに対旋律を付け加えた2声オルガヌムを作曲し,さらに1年を通じておもな祝日で歌われるそのような作品を集大成して《大オルガヌム曲集Magnus Liber Organi》を完成した。その後継者にあたるペロタンPérotin(ペロティヌスPerotinus)はこの曲集を改訂して,数多くの3声ないしは4声のオルガヌムを残した。…

【ポリフォニー】より

… ヨーロッパではポリフォニーの歴史は宗教的声楽曲とともに始まる。その起源は定かではないが,現存最古の例は,9世紀末の理論書《ムシカ・エンキリアディス(音楽の手引き)》にみられるオルガヌムorganum(ラテン語)である。最初期のオルガヌムは,定旋律声部と付加声部の2声が平行進行するものが主体で,声部の独立性はまだ希薄であった。…

【モテット】より

…時代的に大きく分ければ,後期ゴシックまでの中世のモテット,ルネサンス時代の合唱ポリフォニー様式のモテット,種々の作風をあわせもつバロック時代のモテット,18世紀後半以降ロマン派から現代に至るモテットに区分できよう。 中世のモテットは,オルガヌムorganum(ラテン語)と呼ばれる初期のポリフォニーの形態を母体として興った。オルガヌムとはグレゴリオ聖歌の旋律に対して別の旋律を付け加える作曲技法を総称し,9世紀半ばころに始まった最初の形はなお稚拙であった。…

※「オルガヌム(音楽)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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