世界大百科事典(旧版)内の口嚼酒の言及
【酒】より
…また食習慣も酒造法に影響を与え,小麦の伝来とともに粉食の技術を知った前漢末以降の中国では,生の穀粉を練り固めてカビを生やした餅こうじを使った酒造法が主流をなし,粒食をする日本では蒸した米にカビをつけた撒麴(ばらこうじ)で酒がつくられている。このような麦芽やこうじによる穀物酒の発生にいたる進化の中間段階に存在する酒として,焙焼酒(ばいしようしゆ)と口嚼酒(くちかみのさけ)がある。いずれも穀物などデンプンを含むものを原料とし,前者はこれを焼いてデンプンを熱分解し,後者は唾液の作用でデンプンを糖化し,自然発酵させてつくる。…
【醸造】より
…古代中国の宮廷で〈酒人〉として酒造に従事したのも女性であった(《周礼(しゆらい)》)。環太平洋地域に広く分布していた口嚼酒(くちかみのさけ)は,穀物やいものデンプンを唾液(だえき)の酵素で糖化し発酵させたものであるが,これを嚙(か)むものは女性,とくに処女がえらばれている例が多い。平安初期に編纂(へんさん)された《延喜式》によれば,新嘗会(しんじようえ)の祭りに使われた白貴(しろき),黒貴(くろき)の酒は,舂稲仕女(つきしねのしによ)がその年の新穀を杵でついて仕込んでいる。…
※「口嚼酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」