ヒグマ(その他表記)brown bear
Ursus arctos

共同通信ニュース用語解説 「ヒグマ」の解説

ヒグマ

ユーラシア大陸、北アメリカ大陸北部に広く分布し、日本では北海道エゾヒグマが生息する。成獣は体長2メートル以上、体重300キロにもなり、日本最大の陸生動物として知られる。雑食性で草や木の実、サケ、シカなどを食べ、冬は冬眠する。人の生活圏に現れる個体も多く、農作物や家畜のほか、人的被害も問題になっている。ハンターの減少などで、生息数は増加傾向にあるとみられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヒグマ」の意味・わかりやすい解説

ヒグマ (羆)
brown bear
Ursus arctos

最大の食肉類クマ科に属する哺乳類。ヨーロッパ,アジア,北アメリカに広く分布。大きさは変異に富み,体長170~280cm,尾長6~21cm,肩高90~150cm,体重はヨーロッパ南部産のヨーロッパヒグマU.a.arctosで平均70kg,ユーラシア北部産で通常150~250kg,アラスカ南岸のコディアク島産のコディアクグマアラスカヒグマU.a.middendorffiは最大で780kg,体長2.8mに達する。北海道産の1亜種エゾヒグマU.a.yesoensisは比較的小型で,体長2mほど。北アメリカ中北部にグリズリー(ハイイログマ,アメリカヒグマ)U.a.horribilisと呼ばれるものがおり,体長2.5mほどで前足のつめが長く,性質が荒いことで知られるが,ヒグマの1亜種とされることが多い。体色も変異に富み,淡褐色から赤褐色,ほとんど黒色のものまである。

 森林からツンドラ海岸から高山まで広く生息し,単独で行動するが,雌が子連れのことも多い。一日中活動し,とくに早朝と夕刻に活発となる。食性は果実,種子,草木の芽や根,昆虫,魚など範囲が広く,ときにシカなどの大型草食獣ウマなどの家畜を襲う。生活圏は30km2前後だが,食物が季節的移動を誘発し,秋にサケや野イチゴを求めて数百kmを移動することもある。根雪になる大雪の日を感知して冬眠穴に入り,雌は冬眠中の1~3月に1産1~2子を生む(このとき雌の目はさめている)。交尾は5~7月に行われるが,受精卵は10~11月まで子宮に着床しない遅延着床と呼ばれる現象がみられる。子はきわめて未熟な状態で生まれ,体重は340~680gにすぎない。子は穴をでる春まで乳を飲み続け,2歳で性的に成熟し,完全に独立する。寿命は約50年。
クマ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒグマ」の意味・わかりやすい解説

ヒグマ
ひぐま / 羆
brown bear
[学] Ursus arctos

哺乳(ほにゅう)綱食肉目クマ科の動物。ヨーロッパからシベリア、さらにベーリング海を越えて北アメリカまで広く分布する。ヨーロッパではピレネー山脈、イタリア半島など、数か所に隔離状態で分布するにすぎない。北海道のものは本種の1亜種でエゾヒグマU. a. yezoensisとよばれる。形態上に大きな差があり、アラスカのコディアク島に生息するアラスカヒグマ(コディアクヒグマ)U. a. middendorffiは体長2.8メートル、体重700キログラムを超すといわれる。ヨーロッパヒグマU. a. arctosでは200キログラムに達しない。北のほうのものほど大きくなるというベルクマンの規則に当てはまる例としてあげられる。体毛は主として褐色であるが、赤みの強いもの、黒っぽいものもある。ヒグマの分類には、ヒグマ1種としすべてをこの亜種とするものと、アラスカヒグマとハイイログマを独立させ1属3種とするもの、ハイイログマだけを独立させ1属2種とするものなどがある。

 幼獣は木登りをするが、成獣はあまり得意ではない。土の中に掘った穴や樹洞の中で越冬する。雌はこの冬ごもり中に1~2子を産む。雑食性で、低木の樹木の実、ハチなどを食べるが、サケなどの魚類も好んで食べる。北海道のエゾヒグマではウシ、ウマ、ヒツジなどの家畜を襲ったり、リンゴ園を荒らしており、有害獣駆除として捕獲が行われている。ときとして人間を襲うことがある。

[渡辺弘之]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒグマ」の意味・わかりやすい解説

ヒグマ
Ursus arctos; brown bear

食肉目クマ科。巨大なクマで,毛色は黄褐色から黒色に近いものまである。肩のほうが腰より高く盛上がっており,頭も大きい。また強大な爪をもつ。分布する地域により多くの亜種に分けられている。最大のものはアラスカのコディアック島にすむアラスカヒグマ U. a. middendorfiで体長 2.8m,体重 800kgにも達する。北アメリカには,体長 2.6m,体重 400kgに近いハイイログマ U. a. horribilisが分布する。日本では,北海道にエゾヒグマ U. a. yesoensisがおり,体長 2m,体重 250kg内外で,400kgをこえるものも記録されている。いずれも強大な力をもち,ホッキョクグマとともに地上最大の食肉獣である。ウシ,ウマをはじめ大型の草食獣を捕食し,小動物,魚類,昆虫類のほか,果実,木の芽などの植物質も食べる。急に人に出会ったときなど人を襲うこともある。

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百科事典マイペディア 「ヒグマ」の意味・わかりやすい解説

ヒグマ

アカグマとも。食肉目クマ科の哺乳(ほにゅう)類。体長170〜280cm,尾6〜21cmほど。体毛は長く褐〜黒色。ユーラシア・北米中北部に分布。日本では北海道に亜種エゾヒグマを産する。森林からツンドラ,海岸から高山まで広くすみ,草,木の実・根,サケ,昆虫,蜂蜜(はちみつ)などほとんどなんでも食べる。冬は穴に入って冬眠し(この間,目はさめている),この間に普通2子を生む。性質が荒く,よく人畜を襲う。毛皮は敷物,胆嚢は薬用に利用される。→熊の胆(い)
→関連項目クマ(熊)

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「ヒグマ」の解説

ヒグマ
学名:Ursus arctos

種名 / ヒグマ
科名 / クマ科
日本にいる動物 / ◎
解説 / きょうぼうな動物のイメージがありますが、実際には植物を中心に食べます。
体長 / 1.3~2m
体重 / オス120~350kg、メス50~200kg
食物 / 植物の茎、根、実、昆虫類、シカ、サケなど
分布 / 北アメリカ、ユーラシア北部に広く分布し、4つの亜種に分かれる。亜種エゾヒグマは北海道
絶滅危惧種 / ☆外国では絶滅した地域もある

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世界大百科事典(旧版)内のヒグマの言及

【熊の胆】より

…ヒグマUrsus arctosおよびヒグマ属の動物の肝汁の入った胆囊(たんのう)を乾燥させたもの。少しいびつな細長い氷囊型をしており,味はきわめて苦い。…

【クマ(熊)】より

…アライグマ科,イタチ科に近縁で,クマ類は肉食から植物食に転向するにつれて体を大型化してきたものと思われる。体長は,もっとも小型のマレーグマで1.1~1.4m,もっとも大型のヒグマで2.8m。体重は同じく27kgから780kg(食肉類中最大)である。…

【熊の胆】より

…ヒグマUrsus arctosおよびヒグマ属の動物の肝汁の入った胆囊(たんのう)を乾燥させたもの。少しいびつな細長い氷囊型をしており,味はきわめて苦い。…

※「ヒグマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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