《モルガンテ》(読み)もるがんて

世界大百科事典(旧版)内の《モルガンテ》の言及

【イタリア文学】より


[叙事詩の伝統]
 けれども,ルネサンスからバロック時代にかけてのイタリア文学の主流は,やはり叙事詩にあった,と言って間違いない。すでにペトラルカはラテン語による叙事詩《アフリカ》(1338ごろ執筆開始)によってローマで桂冠詩人の栄誉を受け,ボッカッチョはウェルギリウスとスタティウスに範を取って叙事詩《テセイダ》(1340‐41)を著したが,ルネサンス期に入ってまずL.プルチの《モルガンテ》(1483)が発表された。この叙事詩は武勲詩のパロディの一種であり,こうして始められた古典と中世騎士道物語の混交は,M.M.ボイアルドの《恋するオルランド》から,ルネサンス期最大の叙事詩L.アリオストの《狂えるオルランド》(決定版1532)を経て,バロック期最大の叙事詩T.タッソの《解放されたエルサレム》(1565‐75)に受け継がれ,最後にG.マリーノの《アドーネ》(1590‐1616)のあまりにも音楽的な語法の作品に達した。…

【プルチ】より

…彼の詩的土壌はフィレンツェのはつらつたる市民文学の伝統にあり,その意味でプラトン・アカデミーの形而上学的で古典主義的な気風に反発を覚えたのも当然であった。作品にはソネットや《ディコマーノの農婦》などの小品もあるが,風刺とこっけいを旨とする彼の詩精神が存分に発揮され,その名を文学史にとどめさせたのは,半生を費やした《モルガンテ》28歌(1483)である。オルランドを主人公とするこの冒険譚は,フランスの中世騎士道物語を焼き直して都市の広場で語られていた,いわゆる騎士物語歌謡に題材を借りているが,詩人はそのうえに独創的なエピソードや意味深長な登場人物を加え,さらには15世紀フィレンツェ語辞典と呼びうるほどに,口語から文語にいたる多彩な語彙と表現を駆使して,騎士道精神を痛烈に風刺する一大パロディたらしめた。…

※「《モルガンテ》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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