《帝国主義論》(レーニン)(読み)ていこくしゅぎろん

世界大百科事典(旧版)内の《帝国主義論》(レーニン)の言及

【金融資本】より

…しかし,この一節は一見して明らかなように,商業手形の割引を主要業務とする商業銀行と産業との間にもある程度あてはまりそうな抽象的な表現で銀行と商業の関係を述べているにすぎず,この前後にヒルファディングが述べていることの的確な要約とはいいがたく,まして彼の大著を総括するような命題でもない。当然,これを《帝国主義論》(1917)で引用したレーニンは,この定義が,最も重要な要素である高度の,すなわち独占をもたらすほどの,生産と資本の集積について言及していないから不完全であるとして(ちなみに〈金融資本は,株式会社とともに発展し,産業の独占化をもって完成に至る〉というのが,レーニンによって引用された部分の次にくるヒルファディングの文章である),彼自身の簡潔な定義を次のように対置している。〈生産の集積,そこから成長する独占,銀行と産業との融合あるいは癒着――これらの点に金融資本の発生史と金融資本の概念の内容がある〉(第3章)。…

【経済学説史】より

…さらに,《資本論》の第4巻に当たる《剰余価値学説史》は,古典派経済学にいたるまでのマルクス自身の批判的な経済学説史にほかならない。 マルクス以後のマルクス経済学は,《金融資本論》(1910)の著者R.ヒルファディング,《資本蓄積論》(1913)の著者R.ルクセンブルク,《帝国主義論》(1917)の著者レーニン,そして宇野弘蔵などの手により展開されていく。また,L.ボルトキエビチ,柴田敬などを先行者として,置塩信雄,森嶋通夫などにより,マルクス経済理論の数学的構造が明らかにされ,ある意味で近代経済学の立場からのマルクス経済学への接近が容易になった。…

【帝国主義】より

…彼は雑誌の特派員として南アフリカを訪問し,その戦争の背後には経済的動機,とりわけ大金融業者の暗躍があるとの印象を受けた。そして,帰国後,彼は近年イギリスからの資本輸出が急増している点に着目し,植民地拡大はイギリス国内の過剰資本を投資する先を求める大金融業者と投資階級の特殊利益のためにあり,しかも,帝国主義の全体的な構図を描く能力をもつ司令部は金融業者であるという仮説のもとに《帝国主義論》(1902)を書いた。これは,海外膨張を重大な病理状態と見立て,その病巣はイギリス本国で影響力を増す既得権益の体系であると指摘した点で,多大の意義をもった。…

【帝国主義論】より

…一般的に〈帝国主義〉とは,1880年代初頭から第1次大戦に至る時期に,欧米の先進的工業諸国が〈アフリカ分割〉を皮切りにして世界の後進諸地域にその影響力,支配力を拡大していった事象を表す。この帝国主義をもっぱら経済的動機に規定されたものであるとの前提に立ち,初めて体系的な説明を施したのがJ.A.ホブソンの《帝国主義論》(1902)である。ホブソンは,資本主義経済の比類ない生産力によって生み出される過剰な商品ならびに資本が,国内市場だけでは吸収しきれないため,そのはけ口を外国市場に求める結果として帝国主義が導かれるとし,とくに過剰な資本の輸出が帝国主義の原動力であると述べた。…

【マルクス経済学】より

…換言すれば,イギリスやアメリカの金融資本との相違は極端に軽視される傾向にあった。 そこで,ついでV.I.レーニンは《帝国主義論》(1917)を著し,ヒルファディングの金融資本ないし金融寡頭制の規定を前提としながらも,イギリス,ドイツ,アメリカ,フランス等の金融資本の違いをも総括しつつ,世界資本主義は新しい発展段階,すなわち帝国主義段階に到達した,と規定した。そしてこの段階の最大の特徴は,国の内外における資本独占である,と結論した。…

【レーニン】より

… 第1次大戦の勃発に不意を打たれた彼は,直観的にロシアの敗戦は〈最小の悪〉という方針を出して対処したが,戦争の根源,各国社会民主党が祖国防衛主義をとった根源をつかむべく,帝国主義の研究に没頭した。この研究が《資本主義の最高の段階としての帝国主義》(帝国主義論)に結実した。戦争を支持した社会主義者とはいっさい協力しないとして,来るべき革命では自党が権力をめざすとの考えを抱くにいたった。…

※「《帝国主義論》(レーニン)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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