《黎明以前》(読み)れいめいいぜん

世界大百科事典(旧版)内の《黎明以前》の言及

【プロレタリア映画】より

…この年には片岡鉄兵原作,阿部豊監督《女性讃》,ロシアの女流作家エリーザ・オルゼシェンコ作《寡婦マルタ》を翻案した田坂具隆監督《この母を見よ》,村田実監督《ミスター・ニッポン》,内田吐夢監督《ミス・ニッポン》,農民一揆を描いた小石栄一監督《挑戦》,ラファエル・サバティニの小説《スカラムーシュ》を翻案した辻吉朗監督《維新暗流史》等々がつくられて話題を呼んだが,これらの〈危険思想〉をはらむとされた〈傾向映画〉に対して,当局は検閲制度というかたちで圧迫を加え,多くの〈傾向映画〉が〈内務省警保局活動写真フィルム検閲係〉の干渉を受け,すくなからぬ削除や改訂を強要され,また,撮影不能に追い込まれる脚本もあった。しかし,〈傾向映画〉はそもそも企業映画会社の撮影所のなかの現象で,会社の同意を前提にしてはじめて存在しえたものであり,左翼思想が流行した時代の流れに迎合便乗した企業会社が資本家的な打算から金もうけのためにつくったものであったから,会社が当局の政治的圧力を甘受するとともにたちまち退潮のきざしを見せ,翌31年には,時流に乗ることを拒んでいた松竹の唯一の〈傾向映画〉といわれる細田民樹原作,島津保次郎監督《生活線ABC》,そして由井正雪事件の後日譚として失業浪人のグループを描き,エイゼンシテインの《全線――古きものと新しきもの》(1929)のモンタージュを活用したものの,〈遅刻した傾向映画〉などと評された衣笠貞之助監督《黎明以前》などが,〈傾向映画〉の最後を飾る作品になった。 その後の日本映画は,〈小市民映画〉とか〈心境物〉などと呼ばれた一種の逃避の笑いに移行していくことになる。…

※「《黎明以前》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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