世界大百科事典(旧版)内のオブライエン,W.H.の言及
【SF映画】より
…絶海の孤島の奥に,前世紀そのままの世界があるという,A.C.ドイルの《失われた世界》的な設定によるこの映画は,そもそもは,A.B.シュドサックと共同監督したM.C.クーパーの〈ゴリラと大トカゲを闘わせる〉という,〈やらせ〉記録映画の企画から生まれた。つまりは怪奇・恐怖映画の客層をねらった発想なのだが,RKOの技術部門で,恐竜の模型アニメーション(人形アニメーション)に取り組んでいた特撮の名手W.H.オブライエン(くしくも前述のドイルのSFの映画化《ロスト・ワールド》(1925)の特撮も担当している)の仕事ぶりを見て,この技法で巨大ゴリラを大暴れさせようと決心したことから,上映時間1時間40分のうち,後半1時間はすべて山場に次ぐ山場という,空前の特撮スペクタクルが完成。そのパニック場面の数々のほら話的な壮大さは,げてものの域をこえたSFのイメージに満ちていた。…
【キング・コング】より
…鎖を引きちぎって街へ暴れ出たコングは,女優をさらってエンパイア・ステート・ビルへ登りつめ,戦闘機の機銃掃射を浴びてしだいに力つき,女優を頂上に残して墜落する。世界的な大ヒットによって,赤字のRKO映画を立ち直らせたこの作品は,製作,監督のメリアン・C.クーパーとアーネスト・B.シェードサックの名以上に,コングをはじめとする恐竜たちのモデル・アニメーションに腕をふるった特撮マン,ウィリス・H.オブライエン(1886‐1962)の名を高からしめた。アニメ人形(頭部の実物大模型も一部併用)のコングの,凶暴さと愛敬とがミックスされた絶妙のキャラクターは,今なお人々に愛され,〈美女と野獣〉のパターン,襲われた都会のパニック描写,モンスターの最後の哀感の表現などが,その後,無数のモンスター映画に模倣された。…
【特撮】より
… 科学的な光学合成装置,いわゆるオプティカル・プリンターも,プロジェクターの回転が正確になった30年代に徐々に完成したのだが,33年には,開発途上のオプティカル・プリンターや,ミニチュア,リア・プロジェクションなど,当時のあらゆる方法を組み合わせて用いた歴史的な特撮映画《キング・コング》が作られた。現実にはありえないほど巨大な(または矮少な)キャラクターが登場する作品の好例で,ミニチュアのモデルに,ストップモーション撮影で動きを与えるという,モデル・アニメーション特撮(これはオブジェクト・アニメ,ディメンショナル・アニメなどとも呼ばれ,今なお用語が不統一である)の創始者,ウィリス・H.オブライエンの代表作でもある。この方式はやがてオブライエンの弟子のレイ・ハリーハウゼン,孫弟子のジム・ダンフォース,デービッド・アレンらにひきつがれていく。…
※「オブライエン,W.H.」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」