世界大百科事典(旧版)内のキリスト教劇の言及
【宗教劇】より
…古来,演劇は宗教,あるいは宗教的・祭儀的なものと密接に結びついており,古代ギリシア演劇はいうまでもなく,インドのサンスクリット古典劇(インド演劇)にせよ,あるいは日本の能にせよ,濃厚に宗教的・祭儀的色彩を帯びるものであったし,この内在的伝統は今日もなお何らかの形で生き続けていると考えることができるだろう。だが演劇史的にみて,そのような〈宗教性〉を帯びた演劇が最も直接的・典型的な形で隆盛となったのは,中世ヨーロッパにおけるさまざまなキリスト教劇(典礼劇,受難劇,聖史劇,神秘劇,奇跡劇など)の場合であり,今日,〈宗教劇〉という語が用いられる場合に,固有名詞的にこれらを総称していうのが普通である。 中世ヨーロッパにおけるキリスト教宗教劇は,概括していえば,イエス・キリストの生誕,受難,復活などのそれぞれの場面や,それら場面の連続,あるいはその生涯の全体,また,使徒や聖者の言行,さらには旧約聖書中の物語,エピソードなどを劇化したものであるが,それはもともと,10世紀初めころに,復活祭典礼の交誦(こうしよう)tropusから発生したといわれている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」