知恵蔵 の解説
ソーシャル・インパクト・ボンド
基本的な運営の仕組みは、行政から委託を受けた事業者(企業やNPOなど)が、金融機関を介して民間から資金を調達し、これを元手に事業を実施するというもの。成果に応じて、資金提供者に行政から対価が支払われるが、事前に合意した成果を得られなかった場合には、元本も返金されない。通常、報酬には上限が設定されるため、行政は予算内で事業を推進できる。財政難に苦しむ多くの自治体には、高度なノウハウを持つ事業者を低コストで活用できるというメリットがある。
ソーシャル・インパクト・ボンドは、2010年に英国で初めて運用されて以来、欧米を中心に広がり、20数カ国までに拡大している(18年末時点)。大手金融機関も参入しており、途上国の貧困解消や女性の就業支援など、国境を越えたプログラムも少なくない。
日本では17年に経済産業省の支援のもと、神戸市と八王子市が進めるヘルスケア事業(前述)で初めて本格導入された。政府も普及に力を入れており、18年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」の中で「成果連動型民間委託契約方式の普及促進」に向けた施策のガイドラインを示している。
(大迫秀樹 フリー編集者/2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報