社会貢献債(読み)しゃかいこうけんさい(英語表記)Social Bond

日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会貢献債」の意味・わかりやすい解説

社会貢献債
しゃかいこうけんさい
Social Bond

社会的問題の解決に限定して資金調達するために発行される債券ソーシャルボンド。医療、貧困失業食糧、教育、格差是正、インフラ整備などの分野が対象となる。かつては環境対策を含む広範な目的で発行する債券を意味したが、国際資本市場協会(ICMA)が社会的問題の解決に限定した債券を社会貢献債(ソーシャルボンド)、環境問題に限定した債券をグリーンボンド、両方の性格をもつ債券をサステナビリティボンド、解決目標は掲げるものの資金使途を問わない債券をサステナビリティ・リンク・ボンドと四つに分類し、日本の金融庁や日本証券業協会もこの分類に従っている。地球全体で持続可能な社会を築くために発行するSDGs債の一種である。当初、世界銀行や国際協力機構JICA(ジャイカ))など国際機関、政府系機関による発行が主流であったが、社会貢献の姿勢をアピールし、投資家の理解を得やすいといった利点があるため、最近は民間金融機関、事業会社、地方公共団体、大学なども発行している。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)対策を目的とする「コロナ債」、途上国での教材の購入を支援する「教育ボンド」、失業者や貧困層向けに無担保小口融資資金を確保する「マイクロファイナンス債」、水道整備にあてる「ウォーター・サポート・ボンド」、農業支援を目的とする「アグリ・ボンド」、インフラ開発全般に使う「インフラ債」などがあり、機関投資家向けから個人向けまで多種多様である。

 新型コロナウイルス感染症の流行もあり、世界の社会貢献債の発行額は2015年の33億ドルから2020年の1669億ドルへ急増し、日本でも2016年(平成28)の350億円から2021年(令和3)の1兆1642億円に急増した。しかし、資金使途があいまいな債券(ソーシャルウオッシング)も増えており、国際資本市場協会は2017年以来、社会貢献債指針公表・改定し、資金使途、事業の選定過程、投資家らへの情報開示、外部評価の導入などを徹底するよう求めている。日本も金融庁が2021年、社会貢献債の発行に関する指針を策定し、資金使途などを定期開示するよう要請。2022年には成果につながっているかどうかを点検する指標集を公表した。

[矢野 武 2022年11月17日]

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知恵蔵mini 「社会貢献債」の解説

社会貢献債

債券発行で得た資金を途上国の支援や地球温暖化対策など、社会的な課題の解決に当てる債券。代表的なものに世界銀行が発行する「グリーンボンド」や国際金融ファシリティ(IFFIm)が発行する「ワクチン債」などがある。同債は、日本国内では、2008年から個人投資家を対象に販売され、最低100万円前後から購入できるもので、13年の発行額は1041億円。12年1169億円、11年1078億円と、3年連続で1000億円を超えている。利回りが比較的高い上、投資を通じて社会貢献できる、自分の投資が何に使われるかが分かる、という商品特性が個人投資家に受け入れられつつある。

(2013-8-28)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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