最新 地学事典 「ダイラタンシーモデル」の解説
ダイラタンシーモデル
dilatancy model
地震発生過程を説明する一つのモデル(C.H.Scholz et al.,1973)。巨視的破壊前に進行する非弾性的体積膨張現象(ダイラタンシー)により,震源域近傍で期待される地震波のP波,S波の速度比などの地震先行異常現象を説明するために提唱された。テクトニック応力の増大により,地震発生前に震源域周辺部が非弾性的体積の膨張を引き起こすと,岩石中の間隙が増大する。するとダルシーの法則により,系内の既存間隙水が新たに生じた間隙に拡散し移動するので,系全体の間隙水圧は低下し,有効圧力が増大する。この結果,強度は増大する。やがて系外から相対的に間隙水圧の低い系内に水が移動してくると,間隙水圧が増大するので,系内の有効圧力は低下し,全域的破壊(地震)に至る。Scholzらはこのようなモデルと地震先行異常現象との関係づけを試みた。ただし,現実の地震は地殻中の力学的欠陥面に生ずるので,モデルが期待するほどに非弾性的体積膨張が地震前に十分に発達するとは限らない。また,地震波速度変化等の観測データの信頼性に疑問がもたれているなどの理由から,ダイラタンシーモデルは近年さほど注目されていない。参考文献:C.H.Scholz et al.(1973) Science,Vol.181:803
執筆者:三東 哲夫・大中 康譽

出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報

