世界大百科事典(旧版)内のダビデ契約の言及
【イスラエル】より
…帝国の首都はエルサレムに定められ,ここにダビデの子ソロモンがヤハウェの神殿を建立した。これらの政治的展開を背景として,ヤハウェがダビデ家とエルサレムを永遠に選んで,イスラエルの支配者と首都に定めたという主張(〈ダビデ契約〉)が生じた。北方諸部族は〈ダビデ契約〉を承認せず,ソロモンが死ぬとダビデ家の支配から独立して北イスラエル王国を建てた。…
【イスラエル王国】より
… 前10世紀初頭に,ダビデは南方部族の中心都市ヘブロンから,南北複合王国の中間に位置するエルサレムに遷都し,そこへ王国成立前の部族同盟の象徴であった〈契約の箱〉を搬入して,イスラエルの神ヤハウェがエルサレムを選び,同時にダビデとその子孫を全イスラエルの支配者に選んだと主張した。これを〈ダビデ契約〉と呼ぶ。ダビデは,外に向かっては宿敵フィリスティア人を撃破したのち,東ヨルダンの諸民族とシリアのアラム人を征服して,南は紅海から北はユーフラテス川に達する大帝国を築き上げた。…
【ダビデ】より
…この成功を背景に,ダビデは王政前にシロ部族同盟の象徴であった〈神の箱(契約の箱)〉をエルサレムに搬入し,イスラエルの神ヤハウェが,エルサレムとダビデ家を永遠にイスラエルの首都と王家に選ぶ約束をした,と主張した。この神の約束は〈ダビデ契約〉と呼ばれ,のちにダビデの子孫からメシアが現れるというメシア思想の源泉となった。晩年,ダビデの中央集権政策に対する民衆の不満はアブサロムの乱となり,ユダ族偏重策への批判はシバShebaの乱を引き起こしたが,いずれも軍の長ヨアブJoabの働きによって鎮圧することができた。…
【ナタン】より
…《サムエル記》下7章は,ナタンがダビデに預言して,イスラエルの神ヤハウェがダビデとその子孫を選び,イスラエルにおけるダビデ家の支配の永続を約束したことを告げる。この神の約束は,エルサレムの選びを加えて〈ダビデ契約〉と呼ばれ,後代になって,ダビデ家の子孫からメシアが出現するというユダヤ教メシア思想の源泉となった。しかし,ダビデが自分の家臣ヘテ人ウリヤの妻バテシバと密通し,この悪行を隠すためにウリヤを殺害させると,ナタンはヤハウェの名によってダビデを激しく叱責して,ダビデ家に不幸な争いが絶えないことを預言した。…
【ユダ王国】より
…前928年ころソロモンが死ぬと,北方諸部族はダビデ家に背いて北イスラエル王国を建てたが,ユダ族はダビデ家に従って南ユダ王国を守った。この間に,ダビデのエルサレム遷都とソロモンのエルサレム神殿建立を背景に,全イスラエルを支配する王朝,王都としてヤハウェはダビデ家とエルサレムを永久に選ぶことを約束した,という主張が起こった(〈ダビデ契約〉)。この〈ダビデ契約〉の思想は,王国400年の歴史を通じてダビデ家の支配を絶対化しただけではなく,王国滅亡後は,ダビデの子孫からメシアが現れるというメシア思想の源泉となった。…
【ユダヤ教】より
… 前13世紀末に,イスラエル人はカナンに侵入して〈約束の地〉に定着したが,前1000年ころ,ユダ族出身のダビデが王となり,シリア・パレスティナ全域にまたがる大帝国を建設し,エルサレムを首都に定めた。その子ソロモンが,エルサレムのシオンの丘に主の神殿を建立すると,主はダビデ家をイスラエルの支配者として選び,シオンを主の名を置く唯一の場所に定める約束をした,と理解された(〈ダビデ契約〉)。ここから,〈メシア〉(原義は〈即位に際して油を注がれた王〉)が,世の終りにダビデ家の子孫から現れるという期待と,エルサレム(シオン)を最も重要な聖地とする信仰が生じた。…
※「ダビデ契約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」