世界大百科事典(旧版)内のテクネの言及
【実践】より
…そこでまた,実践はとくに精神的な倫理的・政治的行為と考えられる一方,より物質的な生産行為は〈ポイエシス(制作)〉としてさらに区別されることにもなる(アリストテレス)。ポイエシスは,芸術をも含めてものを制作するやり方(知識)としての〈テクネ(技術)〉と密接に結びついたものと考えられたが,この点で,制作的・技術的実践には実用的・有用的という意が含意される。こうして,理論を実用性を排除したものとし,それとの関係で実践を道徳的・政治的実践と技術的・生産的実践に価値的に区別する考え方が,その後の西欧思想に一つの枠組みを残した。…
【西洋哲学】より
…しかし,彼らの思索の主題となっていた〈フュシス〉はいわゆる外的自然ではない。ギリシアも古典時代になると,フュシスは〈フュシス‐ノモス(人為的な定めごと)〉〈フュシス‐テクネ(技術)〉といった対概念の一方の項として,人為的な制度や技術による制作物と対置される存在者の特定領域,いわゆる物質的自然を意味するようになる。 しかしもっと古い時代には〈フュシス〉は〈タ・パンタta panta(万物)〉という言葉とほとんど同義に使われ,神々や人間やポリス(都市国家)や人為的なもののいっさいを包摂する〈存在者の全体〉を意味すると同時に,そうしたすべての存在者の〈真の在り方〉をも意味していた(物ごとの真の在り方というフュシスのこの古義は,たとえば英語のnatureにも,物ごとの〈本性〉という意味で残響している)。…
※「テクネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」