世界大百科事典(旧版)内の《トティーヤ台地》の言及
【スタインベック】より
…その内容はリケッツとともに行ったカリフォルニア湾での生物採集記録《コルテスの海》(1941)に詳しいが,人間社会の事象をも善悪の判断や価値観とは無縁の生物界の現象からの類推によってとらえようとするこの態度は,彼の人間観・世界観の根底をなす姿勢であるだけに,作品のすべてに影を投じている。出世作《トティーヤ台地》(1935)は,モンテレー郊外のパイサノと呼ばれる混血の土着民たちの,競争社会から解放された野放図な生活と意見とを,共感のうちにユーモアとペーソスをこめて説話風に描いた佳編だし,連作短編集《天の牧場》(1932)も《知られざる神に》(1933)も,また好評を博した《二十日鼠と人間》(1937)も,激烈な資本主義的闘争の場としての都市の喧騒を遠く離れた農村を舞台に,農民の土に寄せる愛情と信頼を肯定的に描いている。ごうごうたる賛否両論の渦まく中でピュリッツァー賞を授与され,彼の名を国際的にも高からしめた代表作《怒りの葡萄》(1939)も,貧窮農民の共闘の様を伝える迫真的描写の底から,彼らをも包摂して動いてゆくアメリカ社会と人類全体の永遠の歩みに信頼を寄せる作者の楽天的人間観と生命賛歌が聞こえてくる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」