フーテンの寅(読み)ふーてんのとら

世界大百科事典(旧版)内のフーテンの寅の言及

【男はつらいよ】より

…〈直情径行でおっちょこちょい,はた迷惑だが憎めない風来坊〉(渥美)と,《馬鹿》シリーズなどの作品をハナ肇主演で撮り続けてきた山田監督だが,それが《男はつらいよ》で突如ヒットした理由は,故郷の葛飾柴又へ帰ってきた寅が,叔父夫婦をはじめとする心優しき人たちに,すねたり怒ったりする〈甘え〉のパターンが,観客の心情をゆさぶったからだろう。森崎東監督の第3作《男はつらいよ・フーテンの寅》,小林俊一監督の第4作《新・男はつらいよ》を除いて,すべて山田がメガホンを取り,82年12月封切の《男はつらいよ・花も嵐も寅次郎》で30作を迎えた。毎回,寅の片思いの対象として登場する女優が売物となっているが,作者の視点は,むしろ,そのたびに気をやむ〈とらや〉一家とその周辺の,寅に〈ロードーシャ諸君!〉とからかわれる人たち,すなわち,山田監督の《家族》《故郷》《同胞》といった一連の庶民リアリズム作品につながる人間像にある。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」