世界大百科事典(旧版)内のボガトゥイリョフ,P.G.の言及
【仮面劇】より
…同じことは,アフリカ,メラネシア等に見られる仮面結社によって行われる祭礼,日本や西欧にも見られる仮面を用いた祭礼についても言える。 記号論の立場から民衆演劇を研究したソ連のボガトゥイリョフP.G.Bogatyryovは,民衆演劇における仮面の役割として,まず次の2点をあげている。第1に,さまざまな要素のちぐはぐな結合による幻想的な表現効果の活用,これは特に年の変り目の祭りに出現する一種の悪鬼ペルヒトの仮面に見られる。…
【記号】より
…ロシア・フォルマリズムの延長線上にあるプラハ言語学派の活動は,フォルマリズムによる詩的言語(詩学)の研究を引き継ぐとともに,一般に発話の機能モデルの研究を推し進めたが,発話は現実における言語の使用であるから,当然,言語と現実のかかわりあいが問題になり,さらに進んで現実を言語として読み解く展望が開かれた。ボガトゥイリョフPyotr G.Bogatyryov(1893‐1971)の民族衣装の機能構造研究もその成果のひとつであった。これに対してソ連文化記号論は自然言語のうえに形づくられる第2次モデル形成体系(日常言語に対する芸術言語など)に焦点をあて,Yu.M.ロートマンの構造詩学研究,芸術テキストの構造の研究などで活動を軌道にのせ,文化テキストの研究へ見通しを開いた(モスクワ・タルトゥ学派)。…
【詩学】より
…この活性化は,規範からの逸脱と関係があり,文学史におけるあらゆるテキスト,同時代の文学のあらゆるテキストとの相関において決定されるのである。この新しい枠組みの中で,ヤコブソンの詩的機能は言語学者・美学者ヤン・ムカジョフスキーJan Mukařovský(1891‐1975)の〈美的機能〉に発展し,発話の機能モデルが検討され,民俗学者・記号論学者のP.ボガトゥイリョフは民衆芸術(民衆演劇,民俗衣装)の機能構造的研究を残した。 ナチス侵攻を前にしてヨーロッパから北アメリカに脱したヤコブソンは,第2次大戦後,情報理論やパース記号論の諸概念を導入して構造詩学の定式化を行う。…
【プラハ言語学派】より
…プラハ言語学サークル,プラーグ学派などとも呼ばれる。この学派の中心になったのはチェコ人のマテジウスVilém Mathesius(1882‐1945)とロシア人のR.ヤコブソンで,このほかにやや遅れてこの学派に加わったN.S.トルベツコイ,文芸理論で業績を残したムカジョフスキーJan Mukařovský(1891‐1975)や,フォークロア研究でのボガトゥイリョフPëtr Grigorievič Bogatyrëv(1893‐1971)らがいる。 この学派の理論的先駆者はボードゥアン・ド・クルトネとF.deソシュールで,前者の〈機能〉,後者の〈構造〉という概念を受け入れて,言語,文芸理論,フォークロアなどの分野でこの二つの基本概念から分析を行い,今日でも依然として価値のある業績を残している。…
【プログラム】より
…夢声はいわば事前解説の代りにプログラムを考えたわけであるが,そのような事情は今日も同様で,われわれ自身も映画や芝居を見る前にしばしばプログラムを求め,それによりこれから始まる物語や登場人物,役者についての予備知識を得るのであるし,そしてさらには見終えた後も,プログラムを利用することで映画や芝居の追体験をするのである。このことについてロシア出身の民俗学者・記号論学者P.ボガトゥイリョフは,小論《演劇の記号学》のなかで,演劇上演で舞台上の登場人物の性格づけを行うための手段として,台詞(せりふ),身ぶり,舞台衣裳などを基本的要素として挙げたうえで,さらに現代の演劇では〈印刷されたプログラムでその人物について記述するという,演劇的ではない,いわば文学的な手法が加わる〉と補足して述べている。 夢声のエピソードに示されるもう一つの重要な点は,プログラムが一種〈知的なもの〉,あるいは〈近代的なもの〉と考えられている点である。…
【変装】より
…よく知られるように,衣装は単にわれわれの身体を外的な自然の諸条件(暑さ寒さなど)から保護するだけではなく,その着用者の性別,年齢,婚姻の有無,身分,職業,宗教,民族等々を示す,社会的・文化的な記号としての役割をもっている。ロシア出身の民俗学者・記号論学者ボガトゥイリョフPyotr G.Bogatyryov(1893‐1971)が著した《モラビア・スロバキアにおける民俗衣装の諸機能(邦訳題《衣裳のフォークロア》)》(1937)は,このような側面からの衣装の構造的機能研究の先駆的な業績であるが,その中の一章〈未婚の母のかぶりもの〉は,衣装というものがもつシンボリックな機能,ひいてはそれが社会の中で形づくる〈制度的強制力〉を知る上で,示唆に富む事例となっている。モラビア・スロバキアのいくつかの地域では,性道徳を犯し〈未婚の母〉となった娘は,編んで垂らした髪を切られ,既婚女性と同じかぶりものをすることになるのであるが,そのような変更は,妊娠が知れるやいなや有無をいわさずに行われ,その〈堕落した娘〉は,共同社会の中で他の独身の娘とまちがいなく区別されることになるのである。…
【ロシア・フォルマリズム】より
…〈文学ではなくて,文学性,つまりある作品をして文学作品たらしめているもの〉こそ文学研究の対象とすべきであると主張した。おもなメンバーとしては,1915年に設立されたモスクワ言語学サークルのヤコブソン,ボガトゥイリョフP.G.Bogatyryov(1893‐1971),1916年に設立されたオポヤーズ(詩的言語研究会)のシクロフスキー,エイヘンバウム,トマシェフスキー,トゥイニャーノフらがあげられる。彼らは,それまでの文学研究が文化史や社会史,あるいは心理学や哲学に依拠していることを批判するとともに,文学作品を自立した言語世界としてとらえ,言語表現の方法と構造の面から文学作品を解明しようとした。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」