ボードリヤール,J.(読み)ぼーどりやーる

世界大百科事典(旧版)内のボードリヤール,J.の言及

【記号】より

…また文学以外では経済学の批判としての経済人類学が文化人類学の影響のもとに著しい展開を見せ,在来の生産中心主義の経済思想から一転して交換と消費の新しい思想を生み出した。フランスのボードリヤールJean Baudrillard(1929‐ )の記号としての消費の思想はその一つの頂点をなしている。 構造主義の源泉であるロシア・フォルマリズムの発祥の地ソ連では,スターリンの死後,ロシア・フォルマリズムの詩的言語理論とバフチンの文芸学,対話と交流の思想を構造言語学,情報理論,サイバネティックスの諸概念で読み直すことによって,いちはやく文化記号論が発足した。…

【キッチュ】より

…日本では美術評論家石子順造(1929‐77)の主張がその代表的なものであった。60年代末からの記号論と,それに伴うフランスの社会学者ボードリヤールJean Baudrillard(1929‐ )らの消費社会論の進展により,キッチュがほとんど意識されない共示的意味(コノテーションconnotation)の現象であり,消費社会の生み出す美的経験には違いないが,反近代主義者が期待したほどの積極的な役割はないことも明らかにされてきた。キッチュの概念の精密化は,現代社会で生み出される物やできごと,したがって文化全般の分析に有効な手段を提供することになった。…

【消費社会】より

…自分の社会的地位と威信を他人に見せびらかすために物をぜいたくに浪費する。経済学者T.B.ベブレンはこれを衒示(げんじ)的消費とよび(《有閑階級の理論》1899),人類学者や社会学者は象徴交換としての消費とよぶ(たとえば,J.ボードリヤール《象徴交換と死》1976)。北米インディアンのポトラッチはその典型である(M.モース《贈与論》1924)。…

【商品】より

…商品化がますます広がり深まっている現代の市場社会では,この傾向はなおさらといえる。ボードリヤールは,マルクスの考えを受けながらも,いまや商品の物神性は労働や使用価値といった実体をもち,それを隠すといったものではなく,イメージ・記号の差異のみからつくり出される商品の体系そのものの物神性であるとした。商品化が労働の生産物にとどまらず,あらゆる領域に広がることによって,商品の世界は分業や労働を覆い隠すというよりも,そうした過程とは実質的に無関係に独自の価値秩序を形づくり,人々を巻き込み動かすに至っているということである。…

【デザイン】より

…R.ベンチューリ,C.アレクサンダー,K.リンチらの建築論・都市論は,こうした新しい認識を代表している。さらに社会学者たち,たとえばフランスのボードリヤールJean Baudrillard(1929‐ )による物の記号化と消費社会についての分析が,デザインはもはや実体的なものにかかわるのではないという状況をいっそうはっきりと浮かび上がらせた。ボードリヤールの分析は,デザインに希望はない,というに等しい結論をもっている。…

【フェティシズム】より

…われわれが支配されているのは,単に市民社会において物象化し〈事物の非同一的・差異的モメント〉を隠蔽しているかに見える商品の交換価値にとどまらず,使用価値自体が内在せしめている記号性,関係性でもあることを見逃すわけにはいかないだろう。 J.ボードリヤールは〈商品の論理が一般化し,今や労働過程や物質生産物だけではなく,文化全体,性行動,人間関係,幻覚,個人的欲動までを支配している〉(《消費社会の神話と構造》)のが現代の特殊性だという考え方を示しているが,事態はむしろその逆であって,太古から存在した〈文化のフェティシズム〉が,ある特定文化圏においてある時代以降,特に貨幣・商品のフェティシズムという形をとって顕在化しただけの話である。人間はシンボル化能力をもつと同時に実体から疎隔されシミュレーションの世界に入っている。…

※「ボードリヤール,J.」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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