世界大百科事典(旧版)内のミュケナイ時代の言及
【英雄時代】より
…ところがホメロスの叙事詩の英雄の世界を一つの歴史的時代とみなすことそれ自身に問題があったことは,1952年イギリスのベントリスによるミュケナイ文書(正しくは線文字Bで書かれた文書)の解読によって証明された。 ホメロスの英雄が活動する背景をなしている社会状態は,基本的には,部族連合の首長を王とし,共同体の貴族層が評議会を構成し,王や貴族を含む共同体の一般成員が民会を構成し,したがって国家成立以前のそれであるが,ホメロスの英雄たちの時代そのものはミュケナイ時代末期(前1200年ごろ)である。ところが,考古学的遺物とミュケナイ文書が明らかにしているミュケナイ時代末期のギリシア人の諸王国の社会は,青銅器文明の高度な発達を背景に,王が全国の村々に,農産物や畜産物のほか,金などの貢納を義務づけ,小規模ながら官僚制をもってこの義務の履行を監視している,すでに国家といいうる支配体制が形成されている段階の社会であった。…
※「ミュケナイ時代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」