世界大百科事典(旧版)内のジェニトリックスの言及
【親子】より
…しかし,アメリカの心理学者ハーローH.F.Harlowは,実験室での子猿の実験により,子猿が,哺乳瓶を備えているが針金で作られた人工代用の母親より,柔らかい布で作られた授乳しない人工代用の母親に対して愛着を感じていることを明らかにした。母子関係でも,子に対する養育活動は社会的母が血のつながりとは区別されることを示し,父親の場合と同様に,それをマターmater,自然的な母親をジェニトリックスgenetrixと区別すべき余地があるともいわれる。
[近代的親子関係の形成]
洋の東西をとわず,子の利益,福祉が家族,財産,親よりも優先され,第一義的に保護されるべきものと考えられるようになったのは,親子間の実態においても,また規範秩序にあっても,歴史の上では比較的最近のことで,とくに人権思想の発展をみてからである。…
【親族】より
…父親との関係と母親との関係とを区別して考えようとする認識としては,たとえば男性が〈種〉を与え女性が種を発芽する〈大地〉であるとの認識の下に,生殖から子どもの誕生までを解釈している例,子どもの体軀(たいく)は男性から〈骨〉,女性から〈肉〉が提供されたことにより構成されると解釈している例など,世界各地にさまざまな例がある。それら諸民族における親族の〈民俗生物学〉的関係にほぼ共通している認識は,生殖に関与し子どもの誕生をもたらしたとされる両親と子どもとの関係であり,文化人類学では生殖に関与したとされる男性を〈ジェニターgenitor〉,女性を〈ジェニトリックスgenetrix〉と呼んでいる。この2者およびその間にできた子どもとの関係が〈系譜関係〉と称される関係であり,この関係はそれぞれの民族がもつ生殖理論にしたがって信じられている親子関係であって,世界に普遍的であるとまでいわれている。…
※「ジェニトリックス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」