ファナー(読み)ふぁなー

世界大百科事典(旧版)内のファナーの言及

【イスラム】より

…イスラム神秘主義がコーランの教えと無関係でありえないのは当然であるが,イスラムの神秘的要素とイスラム神秘主義とは,決して同じものではない。イスラム神秘主義は9世紀から10世紀にかけて,神への愛,神との合一であるファナー,神についての神秘的知識であるマーリファという三つの要素を統合し,その境地にいたるためのジクル,サマー等の修行の方法を整えて成立したとするのが,現在のところ最も穏当な見解であろう。イスラム神秘主義は,シャリーアの形式主義化に対する反動として生じ,神秘主義者はこのような結果を招いたものとしてウラマーを非難し,両者の関係は緊張していた。…

【イスラム神秘主義】より

…やがてジクルの対象madhkūr,ジクルの主体dhākir,ジクルの行為dhikrという区分が消滅し,ジクルの対象である神が主体の心を完全に圧倒し包摂し尽くして,自己をまったく意識しない忘我の状態に入る。これがスーフィーの間でファナーfanā’(消滅)と呼ばれる神秘的合一体験である。それは,神そのものとの一種の触合いの体験である。…

【酒】より

…中でもアブー・ヌワースは最大の退廃的詩人で,酒屋に入りびたり,同性愛にふけり,数々の悪徳をつんだ。一方,恋愛詩の用語を用いて神への愛をうたいあげる神秘主義詩人においては,ハムルという言葉は神との合一体験に達して,恍惚(こうこつ)とした境地に至ること(ファナー)を象徴的に表すのに用いられた。なお,西アジア特産の酒としてはアラクがよく知られている。…

【ジクル】より

…イスラムにおける人間の崇拝行為とは,神の賛美のことであるならば,ジクルが儀礼の主要な要素となるのは当然である。後にイスラム神秘主義において,それは一種の称名として,そのような言葉を常にあるいは集団で定期的に一定の所作を伴って繰返し口称し,それによって神を常に念じ,さらに精神の集中によって自己と神との二元的対立を超えた忘我の状態,すなわち神秘的合一体験(ファナーfanā’)に至る方法として実践されるようになる。同様なものとしてサマーsamā‘があるが,ファナーの追求のために歌や音楽を用いるなど逸脱的傾向が強い。…

【タウヒード】より

…これについて,ムータジラ派は神の絶対的唯一性を説く立場から多性を示すとする神の属性を否定するのに対して,アシュアリー派はこれを認める。またスーフィーたちは,これを自我意識が消滅してすべてが神に包摂されてしまっているファナーの意味に用いる。【中村 広治郎】。…

※「ファナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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