六訂版 家庭医学大全科 「上顎洞がん」の解説
上顎洞がん
じょうがくどうがん
Maxillary sinus cancer
(鼻の病気)
どんな病気か
上顎洞に発生する悪性腫瘍が上顎洞がんですが、このうち上顎洞の上皮(表面の細胞)から発生するものを上顎洞
耳鼻咽喉科領域のがん(以下、本稿では“がん”で表記します)では、喉頭がん、口腔がん(舌がんなど)とともに多いがんですが、胃がんや子宮がんと比べるとずっと少なく、日本の年間推定患者は約1000名で、男性にやや多いといわれています。
原因は何か
多くの他のがんと同様に明らかな原因は不明ですが、
症状の現れ方
検査と診断
腫瘍が鼻腔に進展して(広がって)いる時は、そこから生検(組織をとって調べる)が可能で、顕微鏡による組織学的所見を得ることができます。鼻腔に進展せず、かつがんが疑わしい場合は、歯肉から切開して(試験
がんの進展をみるにはCT検査が有用です。副鼻腔はすぐ上方に脳があるので、がんの進展をみることはとくに重要です。頸部のリンパ節に転移することがあるので、頸部の検査(CT、超音波エコーなど)も必須です。
治療の方法
以前は上顎洞がんに対する標準的な治療は、手術が主体で上顎を全部取っていました。近年、有効な化学療法(抗がん薬)の開発と放射線治療の改善が進み、それらと手術を上手に組み合わせた集学治療(三者併用療法)が一般的になりました。手術による機能欠損を少なくしようとする治療法です。
放射線治療では化学療法(抗がん薬)を同時に用いる化学放射線療法が行われています。早期がんでは鼻の穴から内視鏡を用いて行う手術(ESS)も可能ですが、進行がんでは歯ぐきから切開を行うことが一般的です。
三者併用療法導入後の5年生存率は50%を超えようとしています。それでも
病気に気づいたらどうする
前述の症状があれば、設備の整った総合病院の耳鼻咽喉科への受診をすすめます。悪性腫瘍ですから、早期発見・早期治療が必要なことはいうまでもありません。
河田 了
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報