日本大百科全書(ニッポニカ) 「副鼻腔腫瘍」の意味・わかりやすい解説
副鼻腔腫瘍
ふくびくうしゅよう
副鼻腔に発生する腫瘍で、良性と悪性に分けられる。
[河村正三]
副鼻腔良性腫瘍
嚢腫(のうしゅ)以外はむしろ少ない。嚢腫でもっとも多いのは粘液嚢腫で、副鼻腔開口部の閉塞(へいそく)や狭窄(きょうさく)などに原因する。ついで歯起原の歯根嚢腫、濾胞(ろほう)性嚢腫で、まれには先天性嚢腫もある。いずれの嚢腫も徐々に拡大し、感染がおこらない限り疼痛(とうつう)はない。嚢腫の発生部位の関係から、頬(きょう)部、前頭部、口蓋(こうがい)の腫脹(しゅちょう)、複視、眼球突出などがしだいにおこる。治療は、完全な手術的除去が必要である。
嚢腫に次いで多いのは乳頭腫で、ときに悪性化することもある。通常、50歳以上の男性に発生し、好発部位は鼻腔側壁、上顎洞(じょうがくどう)および篩骨(しこつ)洞である。鼻閉(鼻づまり)が初発症状で、腫瘍は完全に除去するのがよい。また、ときに骨腫が青年期にみられ、症状は比較的少ないが、頭痛や目の変位などがおこることもある。そのほか、腺腫(せんしゅ)、線維腫、歯性の腫瘍、血管腫、軟骨腫などがある。
[河村正三]
副鼻腔悪性腫瘍
癌(がん)がもっとも多く、そのほか肉腫、黒色腫、悪性リンパ腫などがある。通常、上顎洞や篩骨洞に生じ、まれに蝶形(ちょうけい)骨洞や前頭洞にみられる。ときには鼻腔側壁や鼻中隔に生じることもある。症状は片側性鼻閉、鼻漏、ときに歯痛で始まることが多い。鼻漏は膿(のう)性で、しだいに悪臭をもち、汚い膿血性になる。やがて片側の頬部や口蓋の腫脹、複視、眼球突出などがおこり、ついには顔面皮膚や口蓋内へ自潰(じかい)する。転移は頸部(けいぶ)リンパ節が主で、他の臓器には比較的少ない。最後は頭蓋内に浸潤をおこして死亡することが多い。放射線治療、抗癌剤の投与および手術の3者を併用した治療がよく、早期治療によって治癒した例が増えてきている。
[河村正三]