副鼻腔腫瘍(読み)ふくびくうしゅよう(その他表記)Paranasal sinus neoplasm

六訂版 家庭医学大全科 「副鼻腔腫瘍」の解説

副鼻腔腫瘍
ふくびくうしゅよう
Paranasal sinus neoplasm
(鼻の病気)

どんな病気か

 腫瘍はいわゆる“できもの”のことですが、良性腫瘍悪性腫瘍に分けられます。悪性腫瘍は“がん”と同義で、さらに上皮から発生する(がん)と非上皮から発生する肉腫(にくしゅ)からなります。副鼻腔に発生する癌の代表は上顎洞(じょうがくどう)の上皮から発生する上顎洞がんで、これについては次項で述べます。

 一方、副鼻腔に発生する良性腫瘍は比較的まれで、乳頭腫(にゅうとうしゅ)骨腫(こつしゅ)を除くと頻度は高くありません。以下、そのなかでも比較的よくみられる乳頭腫について述べます。

原因は何か

 ウイルス、とくにヒトパピローマウイルスとの関連が報告されています。あらゆる年齢で発生しますが、50~60代の男性に多いとされています。

症状の現れ方

 腫瘍が小さければほとんどの場合、無症状です。副鼻腔を圧迫すると痛みや違和感が出てきます。また、鼻腔に進展する(広がる)と鼻閉(びへい)(鼻づまり)や鼻漏(びろう)鼻出血が生じてきます。

検査と診断

 鼻腔に腫瘍があれば、耳鼻咽喉科の診察で直接確認することが可能ですが、慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)蓄膿(ちくのう))に伴うポリープ鼻茸(はなたけ))と区別することが難しい場合があります。

 副鼻腔のX線検査片方の副鼻腔に影がある場合は、本疾患が疑われます。副鼻腔の代表的な疾患である慢性副鼻腔炎では、ポリープは一般に両側発症するからです。一方、次項で述べる上顎洞(じょうがくどう)がんは片方の副鼻腔に発生するので、乳頭腫との区別が重要になります。

 単純X線よりCTMRI検査のほうがより多くの情報が得られます。鼻腔に進展した乳頭腫では、同部からの生検(組織をとって調べる)で組織診断が可能です。

 鼻の乳頭腫は組織学的に3つに分けられますが、このうち内反性乳頭腫にがんの合併が多い(5~20%)といわれています。

治療の方法

 乳頭腫と確定診断した症例あるいは疑われる症例では、がんの合併の報告もあり、一般に手術の対象です。手術法には大きく2つの方法があり、ひとつは歯肉を切開する方法で、もうひとつは鼻の穴から内視鏡を用いて行う方法(ESS)です。

 現在では後者のほうが主流になりつつありますが、腫瘍の広がりで決定されることになります。良性腫瘍にもかかわらず、時に再発が認められるので、完全切除が望まれます。

病気に気づいたらどうする

 前述の症状があれば、耳鼻咽喉科の受診をすすめます。

河田 了

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「副鼻腔腫瘍」の意味・わかりやすい解説

副鼻腔腫瘍
ふくびくうしゅよう

副鼻腔に発生する腫瘍で、良性と悪性に分けられる。

[河村正三]

副鼻腔良性腫瘍

嚢腫(のうしゅ)以外はむしろ少ない。嚢腫でもっとも多いのは粘液嚢腫で、副鼻腔開口部の閉塞(へいそく)や狭窄(きょうさく)などに原因する。ついで歯起原の歯根嚢腫、濾胞(ろほう)性嚢腫で、まれには先天性嚢腫もある。いずれの嚢腫も徐々に拡大し、感染がおこらない限り疼痛(とうつう)はない。嚢腫の発生部位の関係から、頬(きょう)部、前頭部、口蓋(こうがい)の腫脹(しゅちょう)、複視眼球突出などがしだいにおこる。治療は、完全な手術的除去が必要である。

 嚢腫に次いで多いのは乳頭腫で、ときに悪性化することもある。通常、50歳以上の男性に発生し、好発部位は鼻腔側壁、上顎洞(じょうがくどう)および篩骨(しこつ)洞である。鼻閉(鼻づまり)が初発症状で、腫瘍は完全に除去するのがよい。また、ときに骨腫が青年期にみられ、症状は比較的少ないが、頭痛や目の変位などがおこることもある。そのほか、腺腫(せんしゅ)、線維腫、歯性の腫瘍、血管腫、軟骨腫などがある。

[河村正三]

副鼻腔悪性腫瘍

癌(がん)がもっとも多く、そのほか肉腫、黒色腫、悪性リンパ腫などがある。通常、上顎洞や篩骨洞に生じ、まれに蝶形(ちょうけい)骨洞や前頭洞にみられる。ときには鼻腔側壁や鼻中隔に生じることもある。症状は片側性鼻閉、鼻漏、ときに歯痛で始まることが多い。鼻漏は膿(のう)性で、しだいに悪臭をもち、汚い膿血性になる。やがて片側の頬部や口蓋の腫脹、複視、眼球突出などがおこり、ついには顔面皮膚や口蓋内へ自潰(じかい)する。転移は頸部(けいぶ)リンパ節が主で、他の臓器には比較的少ない。最後は頭蓋内に浸潤をおこして死亡することが多い。放射線治療、抗癌剤の投与および手術の3者を併用した治療がよく、早期治療によって治癒した例が増えてきている。

[河村正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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