二つの国民(読み)ふたつのこくみん

世界大百科事典(旧版)内の二つの国民の言及

【イギリス】より

…そして工業化の進展にもかかわらず,国をあげてジェントルマン志向の強まったのが,このビクトリア時代であった。 ところでこの〈ジェントルマンの国〉は,世界最初のプロレタリアート(労働者)階級を広範につくりだしており,ディズレーリの小説《シビル》(1845)の一節を借りれば,〈お互いになんらの交渉も親愛の情もなく,お互いに思想,習慣,感情を異にする,二つの国民〉から成る国でもあった。〈二つの国民〉,すなわちジェントルマンであるか否かの間に越え難い決定的な線が引かれている点に,イギリスの社会構成の最大の特徴が存する。…

【ビクトリア時代】より

…たしかに一部上層の熟練労働者は労働組合をつくり,1867年には選挙権も獲得し(第2次選挙法改正),自助の生活態度さえ身につけ始めていたが,不熟練労働者の大部分は政治的権利からも疎外され,世紀末のC.ブースとB.S.ラウントリーの調査によるなら,都市域の人口の約3分の1がスラム街に住み,〈貧困〉の状態にあった。B.ディズレーリは,1840年代のイギリス社会を富者と貧者の〈二つの国民〉と称したが,この状況は繁栄期のビクトリア時代にもなお維持されていたといってよい。 1840~70年代の時期は,科学の発達に伴って人々のキリスト教的世界観がしだいに崩壊していった時代でもあった。…

※「二つの国民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」