世界大百科事典(旧版)内の信仰の奇跡の言及
【奇跡】より
…〈何人にも知覚されうる驚くべきできごと〉というのは,奇跡が本来人々を歴史や経験の世界に埋没している状態から脱出させるための呼びかけであるかぎり,それは直接に感覚に訴えかけるものでなければならず,また人々をゆり動かして経験世界からの超越を実現させるほどの衝撃的な異常性をそなえているべきことを意味する。したがってカトリック教会の〈聖体の秘跡〉においてパンとブドウ酒がキリストの体と血に変化するとされるのは,信仰によってのみ認識されることであるから,〈信仰の奇跡〉と呼ばれることはあるが,ふつうの意味の奇跡ではない。また〈驚くべき〉〈異常性〉といわれることの程度に関してはいろいろな論議があるが,奇跡において本質的なのは現象の異常さではなく,むしろそれによって指示されている神の救いの業の偉大さと不思議さであることを忘れてはならない。…
※「信仰の奇跡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」